2005年03月29日(火) 02時48分
欠陥・汚染・運航ミス…ブランド企業失墜 露骨な隠蔽、広がる傷口(産経新聞)
名だたる“ブランド企業”の不祥事が相次いでいる。国土交通省は二十八日、新たな「欠陥隠し」が発覚した三菱ふそうトラック・バスの幹部から事情聴取。管制官の指示違反などトラブルが続発している日本航空(JAL)に対しては、異例の査察に入った。「大阪アメニティパーク」(OAP)の重金属汚染隠し事件をめぐっても、事業主の三菱地所や三菱マテリアルの役員らが事実関係の公表に難色を示していたことが判明。企業のコンプライアンス(法令順守)が声高に叫ばれる中、不祥事隠しでさらに傷口を広げている。
三菱ふそうの問題は、大型トラックの欠陥をリコール(回収・無償修理)した後、火災などが相次いだのに公表せず、国への報告も怠っていたというものだ。国交省は二十八日、同社の塩沢秀幸品質・技術本部長らを呼び、道路運送車両法に基づき報告しなかった経緯について事情を聴いた。ビルフリート・ポート社長からも二十九日、聴取する。
同社は一連の不祥事を総括する社内調査結果を二十九日に公表する予定だった。いわば旧体制が引き起こした事態を総括するもので、社外の弁護士らが客観的に分析を進めてきた。経営不振からの脱却を目指す同社は、すでに提出済みの「再発防止策」と合わせて再出発への足がかりにしたい意向だった。
ところが今回の問題発覚を受けて延期を決定、“再生”をアピールするどころか、「露骨な隠蔽(いんぺい)体質など、結局は何も変わっていない」(国交省幹部)ことを浮き彫りにする結果となった。
ふそうは昨年六月と今年二月、段階的にこれまでの「欠陥隠し」案件を公表し、順次リコール作業を進めた。しかし、この過程で幾度も調査の「終結宣言」を出すお粗末ぶり。対応の不備や隠蔽と受け取られかねない行為を繰り返した。今回もポート社長率いる現体制での問題。同省の別の幹部は「これほど当事者能力のないメーカーは市場から退場すべきだ。新たな犠牲者が出てからでは遅すぎる」と手厳しい。
重大ミスが相次ぐJAL。同省の岩崎貞二航空局長は、羽田空港(東京都大田区)の日航運航本部と日航本社(同品川区)を査察した。局長による査察は異例のことだ。
一連のトラブルの口火を切った北海道・新千歳空港での無許可滑走(一月二十三日)は、追突の危険性があったにもかかわらず、同社は国交省への報告を怠っていた。トラブル隠しとみられても言い逃れはできない。岩崎局長は、管制官との交信内容の確認や客室乗務員との連絡など、最近のミスの事例を具体的に踏まえ、「一連のトラブルは機械的なものもあるが、ヒューマンファクターが多い。人同士のやりとりの中でチェックすることが重要だ」と話した。
大阪市のOAPの環境汚染隠蔽事件では、開発主体の不動産大手「三菱地所」(東京)の高木茂社長(65)と非鉄金属大手「三菱マテリアル」(同)の西川章会長(70)が、汚染の事実を把握した約一年後のトップ会談で公表を議題にした際、西川会長が「すでに遅すぎる」と難色を示していた。両社の役員らの協議では、三菱地所が「公表すれば資産価値が下がる」といった発言もあったという。
「スリーダイヤ」を守ろうと躍起になり、結果的にブランドを傷つける。大阪府警は法人としての両社と経営陣の立件を視野に詰めの捜査を急いでおり、「三菱ブランド」はまた、地に落ちることになりそうだ。
(産経新聞) - 3月29日2時48分更新
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