2005年03月29日(火) 01時48分
<個人情報保護法>4月全面施行、企業ピリピリ(毎日新聞)
個人情報をめぐり民間に初めて法の網をかぶせる個人情報保護法が、4月1日から全面施行される。企業にとって、顧客らの情報漏えいは大きな打撃となってきたが、今後は情報管理の徹底がより一層求められる。各企業や業界団体が危機感を募らせてさまざまな対策を講じる一方、ビジネスチャンスととらえて情報管理システムの開発に力を注ぐ動きもある。個人情報を取り巻く現状を探った。
■金融機関
全面施行に、とりわけ神経を使っているのが保険業界。営業マンが個人情報を持ち歩くことが多く、個人情報の流出事故が相次いでいるためだ。
最大手の日本生命は、今年1月に5万7000人いる営業部門の社員を対象に、専用キーを差し込まないと情報を呼び出せない携帯端末を導入した。さらに、蓄積した個人データを保護法の規定に合わせて再処理したり、システムの組み替えも進めている。対策のために04、05年度で計50億円を使う。
三井住友海上火災は2月、全国700の営業拠点を対象に、データを暗号化した「持ち出し専用パソコン」を数億円かけて導入した。同社は「事故が起きれば顧客の信用を失いかねないので必要不可欠の経費だ」と説明する。
全国銀行協会は昨年末、「自主ルール」を策定した。顧客から求めがあったらダイレクトメールや電話での営業活動をやめなければならないとしたほか、適切・迅速な苦情処理体制の整備をルール化し、各行が具体化に取り組んでいる。
■電機メーカー
電機業界は、個人情報が入ったパソコンの盗難事件が後を絶たないことに危機感を持つ。
日立製作所は情報・通信グループを中心にプロジェクトチームを作って検討し、「どんな対策を施しても盗まれる」と結論を出した。その結果、発想を転換し、盗まれてもデータが流出しないよう、ハードディスク(HD、大容量記憶装置)のないパソコンを中心にしたシステムを2億円かけて開発。データは会社のサーバーなどに蓄積し、作業の度に引き出す仕組み。年度内に2000台、05年度中に計8000台の専用端末を12億円かけて導入する。「情報漏えいは待ってくれない」(古川一夫グループ長)として、全社的な導入を急ぐ。
三菱電機は2月16日付で「企業機密管理宣言」を制定し、個人情報、営業情報、知的財産などに関する管理規則を見直している。具体的には、25億円投資し、情報が蓄積された部屋への入退室管理システムを強化するほか、5億円かけ暗号化や利用管理など情報システムのセキュリティーを高める。06年3月末までに従業員教育も徹底する。
■事務機器
「全面施行を商機に」と虎視眈々(たんたん)なのが事務機器業界だ。コクヨは保護法に対応した「ファイリング・セキュリティ・キャビネット」を開発し、今年から、セキュリティー関連事業に本格参入した。扉を開くには、IDカードによる個人認証が必要で、収納ファイルにはICタグがつき、「いつ」「誰が」「何を」持ち出し、戻したか自動的に記録する。権限のない人が取り出したり、別のファイルを入れると警告音を出す。セキュリティー事業で同社は、「07年度にはグループ全体で、約1000億円の売り上げを目指す」という。
リコーは不正コピー防止機能の付いたデジタル複写機を開発。富士ゼロックスは暗証番号で認証した人だけ印刷できる複写機やデータの暗号化など、オフィスの総合的なシステムを売り込んでいる。【竹島一登、野原大輔】
(毎日新聞) - 3月29日1時48分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050329-00000006-mai-soci