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2005年03月20日(日) 08時29分

急増する韓国人スキー客  認識のズレ、摩擦に拍車産経新聞

急増する韓国人スキー客  認識のズレ、摩擦に拍車

 竹島問題で揺れる日本と韓国。山形市の蔵王温泉スキー場で一時行方不明となった韓国人の捜索費用をめぐる、もうひとつの「日韓摩擦」が波紋を広げている。支払いを拒否する韓国人と困惑する関係者。背景には日韓の文化の違いによる相互の認識のズレがあった。国内のスキー離れから官民あげて外国人観光客の誘致を進める東北各県のスキー場関係者には「国際化」への教訓となったようだ。(原川貴郎)

 ◆「働きがない」

 3月11日夜だった。韓国人グループ8人のうち、男子中学生を含む5人がゲレンデを外れ、一時行方不明になった。山形県警は翌12日朝、自力で下山した4人を保護、残る1人を県のヘリが無事救助、一件落着したかに見えた。

 ところが、一行は民間の山岳遭難救助隊の捜索費約11万円の支払いを拒否して早々に帰国。関係者を慌てさせた。

 救助後に通訳にあたった韓国出身の女性によると、韓国では、同様の遭難の場合、依頼を受けた軍などは徹夜で捜索するという。一行は費用の負担に同意し捜索を依頼したが、県警などが捜索を始めたのは翌朝。あくまで日本では二次遭難を避けるため、捜索は暗い夜があけるまで待つのが通例だからだ。しかし、遭難者は翌朝、捜索を前に自力で下山したため、「費用分の働きをしてもらっていないのに、なぜ支払わないといけないのか」と支払い請求を突っぱねたという。

 さらに、一行は事故が実名報道されたことに激怒した。「竹島問題で反日感情が高まる中、日本への旅行が周囲に知られると批判される」という懸念があったようだが、県警にもこうした事情は伝わっていなかった。

 捜索費は宙に浮いたままだ。当局は韓国内の当事者に請求を続ける意向だが、交渉は困難をきわめそうだ。

 ◆誘客施策が奏功

 スキー人口の減少で、各地のスキー場では客不足に悩んでいる。昭和63年度に157万人を超える客を集めた蔵王温泉スキー場も、平成15年度には65万人まで激減した。

 東北各県では、政府が進める外国人観光客増を目指すビジット・ジャパン・キャンペーンとも連携し、韓国の旅行業関係者を招くなどして官民あげてPRしてきた。

 一方、韓国ではスキー人気が高まっているが、韓国内のスキー場はわずか13カ所しかない。週末は大混雑する上、ほとんどが人工降雪のため雪質が悪く、スキー目当てにカナダまで出かける人もいるという。

 ソウルから直行便が就航している宮城、青森、秋田の空港が利用できる東北地方のスキー場は、雪質が良く温泉もあるため、韓国からのスキー客が急増している。

 山形県も15年度から韓国に蔵王温泉スキー場のプロモーションを開始。17年1−3月の蔵王へのスキー客は、前年比10倍の3000人(予約も含む)に膨れ上がっていた。

 ◆険しい国際化

 「私が最初から通訳していれば、こんなことにはならなかった…」

 通訳の女性が悔やむように意思疎通が十分に図れなかった面もある。ただ騒動で浮き彫りになったのは、日韓の捜索態勢や報道をめぐる認識のズレ。双方の理解不足が善意の救助活動に思わぬ摩擦を生じさせてしまったといえる。

 事故により、ハングルのコース案内がないなどゲレンデの不備も指摘された。蔵王温泉観光協会などは、ハングルでの営業終了案内の実施を決め、事故防止のため外国人でも分かる危険表示を設置した。

 山形県観光振興課は「今回の一件をきっかけに不備が一気に改善される。これを教訓として、いい方向に進んでいければ」と今回の騒動を前向きに考えている。

 山形県は宮城県と合同で4月にソウル事務所を開設し、情報提供を徹底するとともに、来年度からハングルに堪能な職員を採用し、受け入れ態勢を強化することにしている。

【2005/03/20 東京朝刊から】

(03/20 08:29)

http://www.sankei.co.jp/news/050320/sha022.htm