2005年03月15日(火) 03時04分
オウム関連食品工場が出現、住民困惑…埼玉・越谷市(読売新聞)
埼玉県越谷市内にオウム真理教関連の食品工場が建設されていたことが、14日分かった。
工場運営会社の代表は信者ではない女性だが、読売新聞の取材に、「信者が食べる食品を製造する工場で、信者が従業員として働く」ことを認めている。工場はまだ稼働していないが、突然の建設に、近隣住民からは困惑の声が上がっており、越谷市も事実関係の確認を急いでいる。
食品工場は木造2階建てで、ファミリーレストランや自動車販売店などが並ぶ比較的交通量の多い県道沿いにあり、近くには新興住宅地が広がっている。不動産登記などによると、敷地面積は227平方メートルで、延べ床面積は265平方メートル。昨年11月に新築された。
運営するのは、昨年6月に設立され、現在、同所を本店所在地としている有限会社。取締役は、千葉県松戸市の女性(67)だけで、敷地も同月、この女性名義で購入されていた。
埼玉県越谷保健所によると、同社の代表はこの女性で、従業員は6人。菓子やめん類などの製造工場として届けられており、昨年12月に食品衛生法に基づく営業許可を受けた。
同社代表の女性は読売新聞の取材に、「自分は信者ではない」としたうえで、「私はずぶの素人。食品製造の経験がある信者が、運営の主体になる。当面は信者向けの食品を作ることになる」と話している。
また、代表になった理由については、「信者から『食べ物に困っている』という相談があったので、協力した」と説明。さらに「工場の土地は自分が購入した。建設費も一部出したが、残りの費用については言えない」としている。
女性は、千葉県松戸市に建設され、その後、立ち退いた教団の食品工場の近くに住んでいたことがあり、「地下鉄サリン事件を起こした教団は嫌いだが、信者はまじめに生きている。手助けができれば、と考えてきた」とも話す。
教団は、「無差別大量殺人行為に及ぶ可能性がある」などとして団体規制法の観察処分を受けており、信者の多くは依然として松本智津夫被告(50)を強く信奉しているとされる。違法行為による逮捕者も相次ぐ教団に関連する工場の建設に、地元の住民は不安と困惑を隠せない。
かつての同僚が10年前の地下鉄サリン事件に巻き込まれたという地元自治会役員の男性(61)は、「恐怖感は今もある」と表情を曇らせる。また、工場近くに住む男性会社員(37)も「会社の実態を隠すのは、フェアなやり方ではない」と批判する。
越谷市の板川文夫市長は「教団関連の食品工場だとすれば誠に遺憾」としたうえで、「今後、事実関係の究明に全力を尽くしたい」と話している。
一方、オウム真理教に関する事件の捜査を続ける公安当局の関係者は「工場建設自体は違法行為ではないが、信者でない女性を代表にすることで、教団との関連を隠す意図があるのではないか」と警戒している。
教団広報部は3月上旬、読売新聞の電話取材に「会社の従業員は信者で、工場の稼働に向けて準備している」と答えたが、その後、改めて文書で、「関係者を集め、事情を聞くことになっている。それまでは対応しかねる」とするコメントを出した。
◆これまでも数々のトラブル◆
警察庁によると、オウム真理教の信者は昨年11月時点で、約1650人。東京都世田谷区のマンションにある本部のほか、17都道府県の計25か所に道場などの拠点施設がある。
教団関連の食品工場を巡っては、これまでも、住民らとの間にトラブルが起きていた。
今回、進出予定が明らかになった越谷市で、教団は、1996年5月ごろから、別の工場を借り上げ、食品を製造していた。住民らが監視活動を続けるなどしていたが、工場の持ち主が失跡。競売にかかったため、同市側が落札して教団に退去を要求し、教団は2000年7月に引き払っていた。
千葉県松戸市内では00年6月、食品工場が建設されたことが判明。地元住民らが退去を求めて教団側と交渉した結果、住民側が補償金を支払うことなどで合意が成立し、工場は03年3月、立ち退いた。
また、岐阜県美濃加茂市の教団施設では、家主が契約切れを理由に立ち退きを求めて提訴したが、敗訴。施設に併設する食品工場は現在も稼働している。
(読売新聞) - 3月15日3時4分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050315-00000201-yom-soci