2005年03月03日(木) 02時17分
米牛肉禁輸 見えぬ解禁政府板挟み 安全委結論出ず 米側は圧力強化(西日本新聞)
牛海綿状脳症(BSE)発生に伴う米国産牛肉の禁輸措置に対し、米議会で報復法案提出の動きが出るなど、米側の姿勢が一段と硬化している。禁輸措置の長期化は、内閣府食品安全委員会の議論がまとまらないためだが、米側の動きに呼応するかのように、閣僚からは早く結論を出すよう求める声も出始めた。食の安全にかかわる問題だけに、対応次第では「米国の圧力に屈した」との批判を浴びる恐れがあり、政府は厳しい対応を迫られている。
先月の日米外相会談でライス国務長官が日本側に早期輸入再開を要請して以来、米議会が日本製タイヤの輸入で牛肉貿易の損失分相当の報復を検討する構えを見せるなど米側のいらだちは強まる一方。一日にはジョハンズ農務長官が「さらなる遅れは日米関係をいっそう困難にする」と、あからさまな表現で日本政府への不満を口にした。
米国は今月七日、BSE発生で禁輸措置を取っていたカナダ産牛の輸入を全面解禁する。この時期の「圧力」について日本政府は、供給過剰を警戒する米国食肉業界の意向を受けた動きとみている。一日には加藤良三駐米大使が官邸を訪れ、小泉純一郎首相に「米国内の空気は深刻」と報告した。
政府は、輸入解禁の前提となる国内対策の見直しについて、昨年十月、BSEの病原体の検出例がない生後二十カ月以下の牛を全頭検査から除外する方針を食品安全委員会に諮問。だが、先月二十四日の専門家会議でも結論は先送りされた。
このため、町村信孝外相が食安委の運営を「常識外れ」と批判。政府内には、今月下旬ともされるライス長官の来日の際、輸入再開時期を提示できればと期待する向きもある。
しかし、議論を急ぐよう促せば「米国への配慮」との印象を国民に与えかねず、「政府は手を出せない」(官邸筋)のが実情。首相も「科学的知見に基づき対応する」と慎重な姿勢を崩していない。細田博之官房長官は二日の会見で「相互の理解を深めて解決していくことで努力をしている。今の議論を見守ってほしい」と米側に呼び掛けるのが精いっぱいだった。
(西日本新聞) - 3月3日2時17分更新
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