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判決理由で永野裁判長は「内部告発には公益性があり、処遇は報復だった」と指摘。「原告の内部告発は正当な行為であって、法的な保護に値するというべきである」と述べた。
訴えによると、男性は1973年、運賃水増しなどのヤミカルテルをやめるよう会社幹部に直訴。無視されたため74年7月、新聞社に情報提供した後、公正取引委員会などにも告発。
会社は75年10月、男性を同県南礪市の教育研修所に異動させ、1人部屋に「隔離」。雑用ばかりで責任ある仕事はなく、昇格もなかった。
これに対し会社側は「勤務評価が低いため昇格などの対象にならなかった」と人事権の裁量の範囲内と主張。「隔離」についても92年6月に同県大門町の新教育研修所に移ったことで解消され、3年以上前のため民法上の時効も成立していると請求棄却を求めていた。
男性は2002年1月提訴。内部告発をめぐっては、通報者の不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法が成立、06年4月施行の見通し。(共同)
74・7 男性が運輸業界のヤミカルテル情報を新聞社に提供
10 男性の告発を受けて公正取引委員会が運輸業界を立ち入り検査
75・3 運輸業界が独禁法に触れる恐れがあるとして運賃などの申し合わせ破棄の新聞公告
9 日本消費者連盟がトナミ運輸など3社を道路運送法違反容疑で東京地検に告発
10 男性が同社教育研修所(富山県南礪市)に転勤
77・11 東京地検がトナミ運輸などを不起訴処分にする
92・6 男性が同社新教育研修所(同県大門町)に移る
2002・1 トナミ運輸に謝罪と損害賠償を求め富山地裁に提訴
05・2・23 富山地裁が処遇を報復人事と認め、同社に賠償命令(共同)
29歳から仕事らしい仕事はなかった。配属先の教育研修所では、3畳ほどの小部屋へ「隔離」され窓際族に。同期の社員が昇進し、管理職に就いてゆく中、「ここでくじけたら終わり」と気力を振り絞った。
2人の子供を授かり、将来の不安も募った。夫の社内での立場をおもんぱかった妻(56)は「会社を辞めて」と何度も頼んだ。「済まないと思う。でも辞めないで不当な処遇に対する抗議の意思を示したい」
「いずれは会社も姿勢を改めてくれると期待したが裏切られた」。若き日の正義感と怒りをどうしても捨てることができなかった。
判決を前に妻は「この30年、これで良かったんじゃない」と言ってくれた。男性は「ありがとう」と心の中でつぶやいた。(共同)
(02/23 14:03)