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[キャッチボール]「子供を遊びから遠ざける判決」
軟式ボールでも、あたり所が悪ければ人は死ぬ。子供でも予測可能なはずだ——。そう言い切った仙台地裁の判決には、違和感を覚えざるをえない。
宮城県内の公園で、三年前に起きた痛ましい事故だ。
小学四年の男児二人がキャッチボールをしていたところ、球がそれ、近くにいた小五の男の子の胸付近にあたった。うずくまる男の子。病院に運ばれたが、間もなく死亡した。
両親が、男児二人の親を相手取り、損害賠償を求めた。仙台地裁は十七日、請求を認め、ほぼ満額にあたる6000万円の支払いを命じた。
ボールがあたった衝撃で心臓が停止した「心臓震盪(しんとう)」が死因だ、という認定だった。
一般にはあまり知られていない病名だ。打撲の跡も残らない程度の弱い衝撃でも発生する場合があり、若年者に見られるという。裁判などでも心臓震盪が死因とされた例はないようだ。
わが子の突然の死に、さぞかし両親は驚いたことだろう。一方で、無心にボールを投げ合っていた男児二人も、死亡事故など考えもしなかったろう。
判決は厳しかった。
〈キャッチボールの球がそれて他人にあたることは十分に予測できた〉〈軟式ボールでも、あたる部位によっては、負傷したり死亡したりすることもある、ということも予測できたはずだ〉
身体的にも発達途上の子供たちだ。球があらぬ方向へ飛ぶこともあろう。時には人にぶつけて多少のけがをさせてしまうかもしれない。「そうならないように注意しよう」。子供たちはそう思って遊んでいるはずだ。まして軟式ボールである。大人でも「人が死ぬかもしれない」などと思って球を投げるだろうか。
「死亡」という結果責任と結びつけるためとはいえ、判決で「死亡予見も可能」とまで断じる必要があったのか。
小中学校の野球チーム、地元の少年野球団などが校庭で行う練習、試合でもボールを投げたり捕ったりする。
学校で同様の事故が起きれば、被害者の側は、加害者の親や指導者、自治体などを相手取って裁判を起こすだろう。
それを嫌い、最近では休日や放課後、校庭を閉鎖する学校も多くなった。空き地も減って、ますます子供たちの「遊び場」が無くなっている。
地裁判決が、指導者や行政まで委縮させることのないよう願うばかりだ。そして親も。「公園で球技はするな。家でテレビゲームでもしていろ」。そんな言葉が当たり前の社会にはしたくない。