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2005年02月19日(土) 00時00分

カード被害 『銀行が補償しないのは不当』 返還請求、集団提訴も 東京新聞

 偽造のキャッシュカードで、知らない間に預金を引き出されたり、金を借りられたりした首都圏などの被害者十八人が十八日、「落ち度がないのに銀行が補償しないのは不当だ」として、総額約六千三百万円の被害金の返還と、計約千九百万円の債務不存在の確認を金融機関に一斉に申し入れた。返還に応じない場合は、三月中にも集団提訴する方針。弁護団は「同様の被害者から毎日連絡が来ており、返還を求める人の数は膨らみそうだ」と話している。

 預金の返還を求められたのは、東京三菱、みずほ、三井住友、UFJなどの大手銀行や地銀、郵便局を管轄する日本郵政公社など。弁護団が、申し入れ書を郵送した。

 被害者は、東京や神奈川、大阪など六都府県の三十−六十代の預金者。一昨年春から昨年末にかけ、多くが群馬県や神奈川県のゴルフ場などで、キャッシュカードの情報を盗まれたという。

 引き出しと借り入れの総被害額が一千万円を超える預金者は五人で、最大は約千四百三十万円。このうち、一千万円以上の預金を引き出された預金者が二人いた。

 偽造キャッシュカードによる預金引き出しをめぐっては、カードの暗証番号をスキミング(読み取り)するなどの手口で被害が拡大。大手銀行などは今年に入り、顧客に過失がないことが確認できた場合は補償を検討すると表明している。

 弁護団の野間啓弁護士は「被害者が自分に過失がないことを証明するのは困難」と話している。

 弁護団は、電話で被害者からの相談を受け付けている。番号は、03(5363)6707。

■責任転嫁の銀行に怒り

 「銀行や警察から冷たくあしらわれ、誰も守ってくれなかった」。偽造カードによる預金引き出しの被害に遭った東京都内に住む自営業田中結香さん(41)は十八日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、弁護団に補償交渉を託すまでの経緯を語った。

 昨年八月、大手銀行に開設していた夫名義の口座の異変に気付いた。パソコンのインターネットバンキングで、預金残高を確認したところ、百十五万円の預金が勝手に引き出され、身に覚えのない八十万円の借り入れがあることに気付いた。

 「何かの間違いではないか」。銀行に問い合わせると、前日の夕方、大阪市内の銀行支店で、二分弱の間に計四回、預金が引き出されていたことが分かった。担当者から「預金引き出しに使われたのは偽造カードだった」と指摘された。

 田中さん夫妻は被害に遭う二カ月前、群馬県富岡市の「レイクウッドゴルフクラブ富岡コース」で開かれたコンペに参加した。同ゴルフ場は、警視庁が摘発した窃盗グループによるスキミング事件の舞台だった。

 大阪府警から事情聴取を受けたが、捜査の進展を聞いても「警視庁に捜査が移ったから…」と素っ気ない答え。

 銀行の担当者は「お客さまに落ち度がないことが確認され次第、補償する」と説明するが、「どう確認するのか」と何度問い合わせても、「本部で検討する」と繰り返すばかり。銀行への怒りを共にするほかの被害者十七人とともに、被害者の会を結成した。

 「最初は犯人が憎かった。でも、今はすべての責任を被害者に負わせようとする銀行に強い怒りを感じています」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20050219/mng_____sya_____006.shtml