2005年02月18日(金) 10時13分
漫画 ちばてつやさんが「わいせつ表現におおらかさを」(毎日新聞)
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証言を前にインタビューに答えるちばてつやさん=7日、手塚耕一郎写す |
出版社「松文館」(東京都豊島区)の成人向け単行本「蜜室」の性描写をめぐってわいせつ図画頒布罪に問われた同社社長、貴志元則被告(55)=1審有罪=の控訴審公判が17日、東京高裁(田尾健二郎裁判長)であり、「あしたのジョー」などで知られる漫画家のちばてつやさん(66)が被告側証人として出廷した。ちばさんは「漫画文化の発展のためには、時にはわいせつな表現も許容するおおらかさが必要だ」と訴えた。
「蜜室」は全ページの3分の2を性描写で占め、1審・東京地裁は「過激な性表現でわいせつ物に当たる」と判断。被告側は「表現の自由を保障する憲法に違反する」などと無罪を主張して全面的に争っており、漫画がわいせつ物に当たるかどうかが初めて本格的に問われている。
ちばさんは法廷証言に先立って毎日新聞のインタビューに応じ「漫画は日本が誇る文化で、当局が規制すべきではない」と訴えた。
ちばさんは6歳の時、中国の旧満州で終戦を迎え、「憲兵や警察が生活の細部に口を出し、庶民が萎縮(いしゅく)しながら生活していたのを肌で感じた」。高校生でのデビュー当時を「戦後の民主主義の中で、何でも表現できる大きな開放感があった」と振り返る。
90年以降、性描写の多いコミックが「有害図書」として規制されたころから「セックスや暴力だけの作品は、いずれは飽きられ自然淘汰(とうた)される。法律で規制すべきでない」と反対してきた。
問題の「蜜室」については「ほめられたものではない」としながら、「文化には必ず毒々しい花も咲く。それが浮世絵のように立派な芸術になることもある」という。「漫画は人間の生き様を描いてきたからこそ支持され世界に認められてきた。大人の世界を描けばセックスシーンは避けられず、『あしたのジョー』でも僕が嫌いな血しぶきの飛ぶ場面はある。それらを取り締まって『禁書』にする流れがとても怖い」
控訴審は来月17日、被告側の弁論が行われ結審する。【井崎憲】
(毎日新聞) - 2月18日10時13分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050218-00000006-maip-soci