2005年02月08日(火) 22時55分
<BSE問題>肉質による月齢判別法、日本が条件付きで容認(毎日新聞)
米国産牛肉の輸入再開問題で、政府の専門家会合は8日、牛の月齢判別方法として米国が採用を求めていた「肉質や骨の成熟度による月齢判別法」について、追跡調査実施などの条件付きで容認した。日本政府は今後、輸入再開の前提となるBSE(牛海綿状脳症)国内検査の基準緩和を待って、輸入再開を認める方針だ。
ただし今月4日に変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の国内患者が確認された影響もあり、食品安全委員会による国内検査基準緩和の行方が不透明になっているため、輸入再開時期は秋以降にずれ込む見通しが強まっている。
先月の日米専門家会合では、米国側が独自の統計調査データ(対象3338頭)を提出。肉質による格付けが「A40」であれば、日米で輸入対象として合意している「生後20カ月以下が確実」として、肉質判別法の採用を迫った。日本側は「調査頭数が少ない」と米国側に追加データの提出を求めていた。
この日の会合では、米国の追加データを基に、「21カ月以上を排除する基準としてA40の採用は可能」と評価。一段の安全性を担保するため(1)追跡調査の実施(2)米国の肉質判別検査官の研修実施(3)米国政府による判別作業の確実な監視——を条件に容認した。
政府は今後、米国と実務レベルで輸入条件の細部を詰めた後、BSE国内検査基準(全頭検査)が「生後20カ月以下の検査除外」に緩和されるのを待って、輸入条件を食品安全委員会に諮問するなどの国内手続きに入る。【望月靖祥】
◇米国産牛肉の輸入再開問題が大きく前進
米国産牛肉の輸入再開問題は、日米間で最大の対立点になっていた肉質による月齢判別法を、日本が条件付きながら認めたことで、大きく前進した。しかし、食品安全委員会による国内BSE検査基準緩和についての審議は、変異型ヤコブ病の国内患者が確認されたことで、慎重に進む公算が大きい。また、日本側は米国に対し、特定危険部位除去の管理体制整備も強く要請しており、輸入再開に向けては、「一段の安全確保」が課題になる。
今後は、国内BSE検査の基準緩和に対する食品安全委員会の答申▽国内基準緩和(厚生労働省令改正)▽輸入再開条件についての食品安全委への諮問▽消費者との意見交換会▽食品安全委の答申▽日米局長級協議での輸入再開合意▽輸入再開——と進む見込み。
日本の検査基準は輸入品と国産品で区別しない「内外無差別」を原則にしている。全頭検査を経ない牛肉の輸入・販売を認めるためには、現在、全頭検査を義務づけている国内検査の基準を緩和する必要がある。
審議は、食品安全委員会で進んでいるが、今月に入って変異型ヤコブ病の患者が確認された影響で、一部の委員から「全頭検査は不可欠」との意見が強く主張されているという。そのため、審議は長期化する見通しが強まっている。
一方、米側の脳など特定危険部位の除去については、一部の米食肉企業の労組が「実態はいいかげん」との内部告発を行うなど、安全性に疑問符も付いている。農林水産省は「確実な管理体制の構築が必要」と米国政府に徹底的な指導・管理を求めていく。
また、肉質による月齢判定に関しても、これまでに提供されたデータ数に匹敵する追加調査や、米政府による判別作業の確実な監視など厳しい条件を付けており、安全性確保を厳しく追及していく構えだ。【望月靖祥】
◇吉野家社長「扉が開かれた」
8日の専門家会合で、「肉質による月齢判別法」が有効とされ、米国産牛輸入の再開に向け前進したことについて、吉野家ディー・アンド・シーの安部修仁社長は、「扉が開かれた意義は大きい」と評価した。
今回の条件で輸入が再開されても、牛丼の需要量の5〜10%程度しか調達できない見通し。しかし安部社長は、「米国産牛肉が売られていない状況より、店頭に並び消費者が買える状況で議論する方がいい」と述べ、輸入再開を契機に、さらに輸入の本格再開に向けて議論が深まることへの期待感を示した。【小林理】
◇ことば=肉質判別
肉や骨の成熟度を基準にした米国の牛肉格付けの一つ。肉の赤色の強さや軟骨の骨化の進み具合などからA〜E、さらに各00〜100(10ごと)に分類し、A00が最も「若い肉」。アルファベットや数字が進むほど「歳をとった肉」になる。米農務省の監査を受けた専門検査官が食肉処理作業の間に瞬時に判断し、枝肉に該当ランクのスタンプを押す。
(毎日新聞) - 2月8日22時55分更新
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