2005年02月07日(月) 02時42分
個人情報保護法4月から全面施行 カルテ・診療費開示義務化 拒否に罰則(産経新聞)
医療ガラス張り
4月から全面施行される個人情報保護法によって、患者本人が希望すれば、医療機関はカルテ(診療録)や診療にかかった費用を示すレセプト(診療報酬明細書)、看護記録、処方箋(せん)などの診療記録を開示することが義務付けられる。義務化により、非開示理由が明確でない場合は厚生労働相が開示の勧告や命令をできるようになる。患者がカルテやレセプトを入手することで、診察内容や診療費用をチェックできるようになるため、医療の透明化や適正化が大幅に進み、医療費の抑制にもつながりそうだ。
個人の権利や利益が侵害されるのを未然に防ぐのを目的にした個人情報保護法は、企業などが本人の同意を得ずに個人データを第三者に提供することを禁じているほか、本人から求めがあれば開示することを義務付けている。
日本医師会や厚生労働省などは、患者へのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の推進の観点などから、これまでもカルテやレセプトの原則開示を医療機関などに求めるとともに、開示に関するガイドライン(指針)を作成していた。
ただ、実際にはインフォームドコンセントに消極的な医師の間では開示が進んでいなかった。医療機関の非開示決定に対し、都道府県に設置された医療安全支援センターなどに苦情を訴えられるが、法的に開示を求める方法は民事訴訟によるしかなかった。
これに対して、四月以降は、ガイドラインで非開示が認められている(1)患者と家族の人間関係が悪化するなど「第三者の利益を害するおそれがあるとき」(2)患者本人に重大な心理的影響を与えて治療に悪影響を及ぼすなど「患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるとき」−のケースにあたらない場合、厚労相が開示を命令する。医療機関が拒否すれば、懲役、罰金といった罰則もあり、「原則開示が徹底される」(厚労省医政局)としている。
カルテなどの開示義務化を受け、厚労省は新たにガイドラインを作成し、今年度中にQ&A形式で記した通知を全医療機関に示す。厚労省は「原則開示が浸透することで、医療の透明化、適正化が進み、医療機関と患者の信頼関係が進む」(医政局)と期待している。
また、患者が診療記録を手にすることができれば、医師の方針に対しても明確な説明を求めることができるようになることから、国の大きな課題となっている医療費の抑制にも寄与しそうだ。
医療費は毎年増加し続けている。平成十六年度は予算ベースで二十六兆円で、平成三十七年度には倍増以上の五十九兆円が見込まれている。レセプトや診療記録の開示は国民全体の医療への関心を高め、結果として過剰な医療や無駄な投薬などを減らすことにもつながる。
「患者の権利オンブズマン」全国連絡委員会代表の池永満弁護士は「カルテなどの開示義務によって、医師と患者による診療情報の共有が当たり前になれば、医療の透明性は格段に向上する。情報開示に消極的な医療機関は評価されなくなるため、不適切な医療も減り、患者の病気への認識も高まるだろう」と話している。
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【個人情報保護法】個人情報を取り扱う事業者に対し、個人情報の目的外利用などを禁止する法律。平成15年に制定された。個人情報の開示を本人が求めた場合、事業者が開示する義務も定めている。
個人情報には医療機関の所有するカルテなども含まれるが、開示が義務付けられるのは5000人以上の個人情報を保有する医療機関に限られ、小規模診療所などは対象外。だが、厚生労働省のガイドラインではすべての医療機関を対象にしており、今後は原則開示が浸透するとみられている。同省では、遺族からの要求にも患者本人と同様の情報開示対応を求めている。
(産経新聞) - 2月7日2時42分更新
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