悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。
また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。
一九九七年八月、神戸地裁で、阪神大震災時に神戸市東灘区の木造二階建て建売住宅(延べ床面積約百四十平方メートル)が全壊したのは、工事に欠陥があったのが原因として、不動産会社と住宅会社に約四千四百六十万円の損害賠償の支払いを命じる判決が下された。
この住宅は一九九〇年十一月に完成。震災で一階部分が北西方向に三十−四十センチ傾いて倒壊した。北西の角の柱と土台が横に約四十センチずれた上、ほかのすべての柱が土台から引き抜かれた状態だった。
裁判で原告側は、建物を支える耐力壁の不足と配置バランスの悪さ▽瓦屋根が重すぎたこと▽柱と土台の接合不足▽壁を補強する「筋交い」端部の接合不足−などを指摘した。
判決では、柱と土台の接合部分が地震で破壊されず、ただ引き抜けただけの状態だった半面、金物で補強されていた二階部分の柱は引き抜けていなかったことを挙げ、建築当時に一般的に実施されていた仕様と比べ、性能不足だと判断して工事の欠陥を認めた。
■阪神大震災で全壊 手抜きを立証、賠償の例も
阪神大震災によって一般住宅の欠陥が明らかになり、勝訴したケースは実はまれだ。この訴訟を担当した秋山謙二郎弁護士(大阪府)は「欠陥が裁判で認定されたのは、これ以外にほとんどないのではないか」と話す。
この住宅の場合は、建物が倒れた状況を撮影した写真や、一級建築士が調査した報告書があり、欠陥を立証する根拠となった。「大地震に見舞われたとはいえ、原告は家が倒れた状況が納得いかず、周到に証拠を残しておいた。それがなければ立証は難しかった」と秋山弁護士。
施工時の欠陥が原因で倒壊したとみられる住宅が少なからずあった、という指摘は多い。ところが震災後、政府が倒壊家屋解体を公費で負担。期限付きだったこともあり、家屋は早い段階で撤去された。混乱の中、証拠まで残せた事例はほとんどなかったのが実態だ。
昨年十一月、金沢市で開かれた「欠陥住宅被害全国連絡協議会」で、「阪神大震災十年目の検証」をテーマにしたシンポジウムが開かれ、欠陥住宅の発生を防ぐ手だてが議論された。会場の弁護士や建築士は「工事監理」=メモ参照=の重要性を口々に訴えた。
住宅メーカーに従属する建築士が設計から工事監理までを担当しており、適正に監理業務をしていない▽最初から工事監理はしない前提で「監理者」として届け出る「名義貸し」が横行−などの問題点が挙がった。施工時のチェック機能が働いていないため、コスト削減のための手抜きやずさんな工事が横行しており、「施工と監理の分離が必要ではないか」との結論で一致した。
検査が欠陥を防ぐことを裏付けるデータを、住宅金融公庫が公表している。
同公庫の融資を受けた住宅では、阪神大震災で最も揺れがひどかった地域でも大破以上が6・4%。他の住宅の16・3%に比べて被害率が低かった。公庫融資住宅の場合、建築途中で基準通りに建てられているかを検査しており、手抜きがしにくいから、と言われる。
同協議会事務局長の岩城穣弁護士は「欠陥を完全に防ぐには、建築中の節目ごとに五、六回は検査する必要がある」と話す。特に、配線や配管、断熱材など、建築が進むと隠れてしまう場所はきちんと確認しておきたいポイントという。
業者からは独立した立場の建築士を雇って検査を担当してもらえば確実だが、消費者側も余分な費用の支払いを渋ることもあり、なかなか浸透していないのが現状だ。岩城弁護士は「“見守り役”が建築士の業務として成り立つよう、法整備を進めていく必要がある」と訴える。
■工事監理
住宅建設の工事全体について、設計図通りに工事が問題なく進行しているかを建築士が確認、検査記録すること。
国土交通省は欠陥住宅を防止するため、▽設計から施工までを一括で契約する場合でも、工事監理だけを第三者に依頼する▽工事監理で確認する内容を十分に相談し、着工時など特に重要な工程では建築主も立ち会う▽設計図書をできる限り詳細に作成する−などを建築主に勧めている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050203/ftu_____kur_____000.shtml