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■貸金業者の言い分うのみ/利息の再計算せず
消費者金融業者数社から数十万円の借金を抱えていた岩手県の四十代の女性は一昨年夏、近くの簡易裁判所に特定調停を申請した。
女性は、数社のうち一社について一九九八年十一月から取引を開始。ところが調停では、二〇〇〇年二月以降分の取引資料だけを用いて、利息制限法による再計算=メモ参照=をしたため、約二万円の借金が残る形で成立した。その後、女性は過払い金の返還を求めて盛岡地裁に提訴。約三十万円の返還を勝ち取った。訴訟では、九八年に借りた分までさかのぼって再計算した。調停の無効も認められた。
これは、調停委員が再計算の材料となる取引経過の資料の提出を貸金業者に強く求めず、実際は過払いだったのに借金が残ったまま調停が成立してしまったケース。
最高裁の調停事件執務資料(ガイドライン)では、調停委員が貸金業者に資料提出させるよう指導している。応じない場合は文書提出命令も可能だ。だが実際には、十分に行われていないのが実情のようだ。
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「過払いがあるのに和解を勧められたり、調停委員が出廷しない業者の代理人のようになって審理が進んだ」と不満を訴えるのは、愛知県在住の五十代の女性。百万円ほどの借金で昨年春、特定調停を申請した。
借り入れた四社のうち一社については、本来は過払い金が戻る状況だったが、業者が調停に応じなかった。調停委員からは数万円の借金を支払うことで和解を勧められ、和解契約書を交わした。その後、女性は調停申立を取り下げ、過払い金の返還訴訟を提訴。約五十四万円を取り戻した。
また、別の一社についての調停では、業者側が出廷しないまま、調停委員が業者と電話で連絡を取った。結局、業者の言い分通りに数万円の債務が残った。調停成立が見込めない時の、民事調停法一七条に基づく裁判所の決定という形だった。
業者から取引資料の提出はなく、利息制限法での再計算はなされないまま。再計算すれば、約二十万円の過払いが生じていたので、女性はその後、過払い金約二十万円の返還を求めて提訴し、現在係争中だ。
ただ、民事調停法一七条に基づく決定は、その後の裁判で覆すことは一般に難しいとされる。
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「調停委員は本当に公平なのでしょうか」と女性。調停成立後、二週間以内に異議申し立てができるが、調停委員からはその説明もなかったという。
多重債務者の救済活動を続ける「愛知かきつばたの会」事務局長で、司法書士の水谷英二さんは「たとえ民事調停法の決定でも、誤りがあれば無効とするのが筋」と強調。「特定調停法の精神は債務者の生活の再建。その精神を順守した調停をしてほしい」と調停委員に求めている。
■29日に苦情110番 愛知かきつばたの会
「愛知かきつばたの会」は29日に、特定調停に関する苦情を受け付ける「特定調停苦情110番」を実施する。
調停の実態を把握するのが目的で、調停委員の対応や手続きの説明の有無、利息制限法による再計算の結果、債務がどのように変わったかなどについて調べる。
同会によると、調停の申し立て自体が受理されなかったり、調停委員が債務者にとって返済不能な提案を出すなど、申請段階での不手際や特定調停法の精神を理解していないケースが相次いでいるという。調停後の相談も増えている。
同会は全国各地の市民団体と連携し、7月ごろまでに全国一斉の「苦情110番」を行う方針。
29日の「苦情110番」は午前10時から午後6時まで。電話は052(916)9131。
<メモ>特定調停
多重債務者を自己破産前に救済する目的で、2000年2月に始まった制度。最高裁が任命した調停委員が仲介し、貸金業者と交渉する。通常は、債務のうち利息制限法が定める上限金利を上回る利息分をカットし、原則3年間の返済案をまとめる。
同法での上限利息は、元金10万円未満で年率20%、10万円−100万円未満は18%、100万円以上は15%。利息分を計算し直すので、消費者金融などからの20%を超える高利の借金は大幅に圧縮されるのが一般的。払いすぎた分が戻る場合もある。
申立費用は数千円程度。申立件数は2000年が約16万件、03年は約53万件。
最高裁によると、調停委員には弁護士や金融機関OBなどが多い。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050127/ftu_____kur_____000.shtml