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「預金の安全性とATM(現金自動預払機)ネットワークの信頼を脅かす重大な問題だ」。全国銀行協会の西川善文会長(三井住友銀行頭取)は偽造キャッシュカードへの危機感を示した。
それにしては対応が遅い。二〇〇三年度に九十一件、二億七千二百万円と急増するのをにらんで、協会として取り組み始めたのが昨年初めだ。警察への被害届けを申し合わせたのは六月。後手に回っているうちに本年度上半期は百二十二件、四億六千百万円と被害額が拡大した。当事者意識が薄かったからだろう。
今回の対策は、金融庁が二月中にまとめる方針の偽造対策と、警視庁などによる偽造グループの初摘発にせつかれての印象が強い。偽造されにくいICカード化や利用限度額の引き下げ、異常な引き出しなどを早期に発見するモニタリング(監視)などの整備は当然の措置だ。
問題は損失補償である。協会は保険付き商品開発の一方で、既存のカードに対しては「規定や法に照らして真摯(しんし)に対応する」にとどまった。これでは銀行によってばらつきが出る恐れがある。
また現行のカード規定によると、偽造でもカードのデータと暗証番号が一致すれば、損失は銀行が幅広く免責され、預金者が原則負担する。例外は、今回の摘発のように預金者に責任がないことがはっきり確認された場合だけだ。預金者に極めて不利な規定である。
米国では一定期限内に通知すれば預金者の負担上限を五十ドル(約五千円)とする法律があり、英国でも同様に五十ポンド(約一万円)とする銀行界の自主ルールがある。それ以上は原則銀行の負担だ。
上限ルールの導入に西川会長は「(欧米とは)慣習の違いがあり無理がある」と消極的だ。しかし、この問題はすでに一九八八年からの旧大蔵省の金融制度調査会で五十ドル・ルールなどを参考に論議された。この時は銀行側の反対で成立しなかったという。例外規定はこの産物だが、「銀行寄りの決着だった」との反省は金融庁内にもある。
キャッシュカードとATMは、預金者の利便性と同時に、銀行にとっては省力化という側面が大きい。銀行は「預金の安全性」を守る責務がある。上限ルールの導入や保険の立て替えに逡巡(しゅんじゅん)すべきではない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20050127/col_____sha_____003.shtml