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2005年01月26日(水) 00時00分

NHK新会長 納得できない内部昇格 東京新聞

 NHK会長を辞任した海老沢勝二氏の後任が内部昇格では国民理解を得られまい。公金意識が希薄化し、報道機関としての自覚を欠いた組織を立て直すため、外部から人材を招くべきだった。

 海老沢氏が問われるべきは、不正経理に関する処理の不手際から受信料支払い拒否の激増を招いたことだけではない。政治に弱いと批判されるNHKにした責任も重い。

 その後任が海老沢体制を支えてきた一人、橋本元一専務理事(技師長)とはどういうことか。これでは海老沢氏の影響力が残り、陰に陽にかかる政治的圧力もはね返せず、報道機関の使命達成はおぼつかない。

 経理不正は組織の一部に公金を扱う緊張感がなかったことを物語る。放送前で編集中の番組について特定政治家に説明に行くことを通常業務とする姿勢は、自立、自律すべき報道機関としての自覚を疑わせる。

 このような体質を変えるには公表された改革案では足りず、現経営陣が総退陣し、内部の空気を一新すべきである。

 新しい会長に求められる条件の第一は、高いジャーナリズム精神の持ち主であることだ。NHKは予算を国会に認めてもらわなければならないため政府や与党との関係が微妙だが、それだけに報道機関としての独立性が決定的に重要となる。

 公共放送の手本として語られる英国のBBCは、客観的であろうと常に心がけ、厳しい政府批判も辞さない姿勢が国民の信頼を得ている。

 第二に、大組織を束ねる権力に酔わず謙虚でいられることである。人選に当たった経営委員会は「政治家と親しい政治部出身者や海老沢氏にすり寄る人ばかり重用された」など職員の声に耳を傾けるべきだった。

 「受信料は公金」という基本認識が徹底していなければならないのは言うまでもない。

 こう考えれば、外部に人材を求めるしかなかったはずだ。

 NHKが抱える課題は多い。自分で選択できる有料放送が増える中で、受信機を設置しただけでNHKの受信料を払わなければならない制度への疑問は強まっている。携帯電話への情報提供など新分野への進出は、「民業圧迫」「肥大化」などと批判されている。

 NHKは国民負担に依存する特殊法人という点では公団や公社と同じだが、国民の方を向かず自己の権益拡大を図る特殊法人の体質を改革する動きの枠外に置かれてきた。

 経営委は最高意思決定機関として主体性を取り戻し、新しい時代の公共放送のあり方を考えてほしい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20050126/col_____sha_____001.shtml