2005年01月23日(日) 02時32分
スキミング 被害、銀行補償に 金融庁、カード約款改訂要請へ(産経新聞)
偽造キャッシュカードで預金が引き出される「スキミング被害」が社会問題化するなか、被害者の救済策を検討していた金融庁は、銀行が被害を補償するよう「カード約款」の見直しを全国銀行協会に要請する方針を固めたことが二十二日、明らかになった。これを受け全銀協は見直しの検討に入るが、制度が悪用される恐れがあるため銀行側は総じて慎重で、調整は難航しそうだ。
金融庁は被害拡大を受けて、被害者救済に向けた自主ルールの導入を銀行に要請するなどのスキミング対応策を詰めていた。その中で、被害に関する補償について各銀行が自主ルールとして定めている「カード約款」の取り扱いが、焦点となることが分かった。
約款は全銀協が作成した案が基本で、各行とも内容はほぼ同じ。偽造カードの被害は「預金者自身が、暗証番号やカードの管理に『落ち度がない』と証明できた場合のみ、銀行が被害を補償する」としている。
だが、スキミング被害の実態を預金者自身が証明することは困難で、大半が“泣き寝入り”しているのが現状だ。
金融庁は預金に対する銀行の管理責任をより重くし、約款を「銀行が預金者に『落ち度がある』と証明できない限り、被害を全額補償する」といった内容に改訂するなど、預金者が不利にならないよう柔軟に運用をするよう要請する。
ただ補償については、第三者が制度を悪用し、預金者になりすまして引き出す犯罪も起こりうるうえ、補償のコスト負担もかかることから、銀行界は総じて導入に慎重。「金融庁と全銀協の判断を待ったうえで検討したい」(大手銀行)という。一方、「銀行法に新たな規定を作る必要もあるのではないか」(銀行アナリスト)といった声も浮上している。
米国では盗難・偽造などの被害に遭った預金のうち、五十ドル(約五千百円)までは免責され、それ以上は金融機関が補償する「五十ドルルール」がある。これを参考にした自主ルールが英国、フランス、ドイツなどでも設けられている。
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≪「自衛」頼み 対策に遅れ≫
スキミングは、キャッシュカードやクレジットカードの磁気データを「スキマー」と呼ばれる機械で盗み取り、別のカードに転写して偽造する犯罪手法。カードそのものの盗難と違って、所有者が知らないうちに偽造され、現金自動預払機(ATM)から預金を引き出される被害が続出。全銀協の調べでは、平成十六年四−九月の被害は、銀行側が認めたケースだけで百二十二件、被害額四億六千百万円と、十五年度(九十一件、二億七千二百万円)をすでに大きく上回った。
十九日には警視庁などの合同捜査本部が、群馬県内のゴルフ場ロッカーから利用者のキャッシュカードを抜き取って作った偽造カードで現金を引き出した窃盗の容疑で、暴力団関係者や中国人らの偽造グループを全国で初めて摘発した。
クレジットカードに比べキャッシュカードの偽造防止対策は遅れており、銀行の対応は暗証番号の変更など預金者への自衛呼びかけが中心だった。最近では偽造しにくいICカードや、手のひらの静脈などで本人確認する生体認証カードを導入する銀行もあるが、切り替えにコストがかかり、対応可能なATMの普及もこれからだ。
(産経新聞) - 1月23日2時32分更新
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