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茨城県内のゴルフ場で昨年春、キャッシュカードのスキミング被害に遭い、現金六十三万円を引き出された埼玉県内の男性会社員(58)は「カーッと頭に血が上った」と当時を振り返った。
この口座はへそくりをためるために開き、普段めったに使わなかっただけに、被害に気付くのが遅れた。「当時は暗証番号に生年月日を使っていた。被害はどうにかならないか、と知人の銀行員に相談したが、どうにもならなかった」と言う。
昨年九月、こうしたカードのスキミングや盗難の被害者団体「ひまわり草の会」(大阪市)が結成された。このうち約二十人は今年三月をめどに、都銀数行を相手取り総額約五千万円の被害回復を求めて集団提訴する方針でいる。
木村耕一郎事務局長は「これまで不正に預金が引き出されても、銀行は責任を負わず、被害者は泣き寝入りしてきた」と指摘する。
こうした批判を背景に、金融業界では大手都銀を中心に昨年から、現金自動預払機(ATM)の一日当たりの引き出し限度額を引き下げたり、偽造が難しいIC(集積回路)チップを利用したキャッシュカードの導入が進んでいる。
あるメガバンクは昨年十月から、手のひらの静脈をATMのセンサーで感知し、本人確認をするICカードの発行を始めた。メガバンクは「安全性重視の客が使い始めている」としているが、ハイテクを駆使したチェック体制の強化をするほどコスト高や不便さが付きまとうのが実情だ。このICカードは、現状では他行のATMでは使えない。
さらに、日本では預金者保護の視点に立った法整備が立ち遅れている。米国では、預金者がカードの盗難に気付いてから一定期間内に金融機関に通知すれば、預金者の負担は五十ドル(約五千円)以内に限られる「五十ドルルール」が法制化されている。英国でも、預金者の負担を五十ポンド(約一万円)以内にとどめる金融業界の自主ルールがある。
金融庁は、金融業界によるこうした被害補償の法制化を検討する方針だが、金融機関の反応は鈍い。ある都銀は「うその盗難被害を申し出て、補償をだまし取られることも考えられ、補償が膨らむ恐れがある」と極めて及び腰だ。
これに対し、偽造カードで約三千万円が引き出され、補償を求めてある大手銀行を訴えた原告の代理人弁護士は「詐欺の恐れがあるからといって、預金者の被害に目をつぶるのはどうか」と金融業界の姿勢を批判。「そもそもキャッシュカードの仕組みは、金融機関がつくったもの。偽造による被害が起きないよう改善に努めるべきだ」と話す。
一方、預金者保護の法制化の問題と併せ、インターネットなど情報技術(IT)の在り方を問う声もある。摘発された犯行グループがカードの偽造に使った磁気情報を読み取るスキマーと呼ばれる機器は、たばこの箱程度の大きさと、手軽だったことが分かった。
特定非営利活動法人(NPO法人)「日本情報安全管理協会」の佐藤健次事務局長は「インターネットなどで、磁気情報が読み取れる高性能のカードリーダーを簡単に入手できる問題もある」と指摘している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050120/mng_____kakushin000.shtml