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全国銀行協会の調べでは、偽造キャッシュカードによる預金引き出しの被害は本年度の上半期だけで百二十二件、四億六千百万円に上り、前年度一年間の九十一件、二億七千二百万円をはるかに上回った。
携帯可能なスキマーなど機器も高度化。民間非営利団体「日本情報安全管理協会」の佐藤健次事務局長は「犯罪集団がキャッシングの限度額が低いクレジットカードより、数百万円の利益が見込めるキャッシュカードに目を付けている」と指摘する。
キャッシュカードや暗証番号の管理は、預金者の責任であることが約款などで定められているため、銀行は原則的に補償には応じていない。
被害の急増を受けて金融機関は昨年から、偽造が難しいIC(集積回路)チップを使ったキャッシュカードや手のひらの静脈で本人確認をする生体認証技術の導入を始めたが、被害負担については慎重な姿勢だ。
米国や英国では、一定額以上の被害は金融機関が負担することを定めた法律や自主ルールがある。金融庁は、金融機関の管理責任もあるとして二月末までに被害対策をまとめるよう要請するほか、金融機関による被害補償のルール作りを検討する方針を示している。
■預金3200万円がゼロ
財布にキャッシュカードがあるのに、気付いたら口座の預金がほぼゼロに−。「週刊現代」編集長を務めた元講談社取締役鈴木富夫さん(65)=千葉県松戸市=は大手銀行二行のカードをスキミングされ、預金など計約三千二百万円を引き出される被害に遭った。
妻が重病で倒れ、介護を続ける中での突然の被害。鈴木さんは昨年八月に銀行を相手に被害額の賠償を求めて提訴しており「日本のカードは何度でもいくらでも引き出される問題点がある。預金者を保護する制度が必要」と訴えている。
昨年三月十五日、鈴木さんは口座の残高を記帳して目を疑った。引き出し件数は通帳一枚に収まらず、百二十七回で計約二千六百万円に。もう一つの銀行でも十二回で約六百万円を引き出され「何が起きたか分からず、本当に不気味だった」と振り返る。
鈴木さんは銀行に説明を求めたが「うちでは分からないので警察に行ってほしい」の一点張り。「銀行にはどこでいくら引き出されたか記録に残っている。調べもしないのは怠慢だ」と憤る。ゴルフ場でスキミングされた可能性が高いという。
鈴木さんは自宅がある松戸市の警察署に被害届を提出し、すぐに捜査が始まった。だが「偽造カードを使われた被害者は、銀行かカードの所有者か」という点がはっきりせず、被害届を出せないまま泣き寝入りしたケースが多数出ている可能性もある。全国銀行協会が「預金が引き出された現金自動預払機(ATM)を管理する銀行が所轄の警察署に被害届を出す」という申し合わせをしたのは、鈴木さんの事件から三カ月後の昨年六月になってからだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20050119/eve_____sya_____011.shtml