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2005年01月19日(水) 15時05分

<スキミング>「銀行、損失補填せよ」被害者、怒りあらわに毎日新聞

 キャッシュカードの「スキミング」が、ついに刑事事件となった。暗証番号がネックになり、以前はクレジットカードより被害が少なかったが、最近は暗証番号を探られ、被害が急増。銀行側もようやく重い腰を上げたが、ある被害者は「銀行は預金者の自己責任と主張するが、対策が遅れている銀行にも責任はある。損失を補償すべきだ」と怒りをあらわにする。
 神奈川県の男性開業医(48)は昨年6月28日朝、口座を開く地銀支店から「あなたがATM(現金自動受払機)で依頼した振込先の口座が見つからない。口座から次々と金が引き出されている」と電話を受けた。心当たりはなかった。通帳を確認すると、3〜4日前に東京都と静岡県のATMから約700万円が引き出され、残金は6000円足らずだった。
 同日午後、銀行の支店長と担当者が医院を訪れた。補償を求めると、同情的だった支店長らの態度は硬化。「銀行にミスがない場合は自己責任です」と告げた。「カードは手元にあるのに、私に何の非があるんだ」と反論したが、支店長は「おれおれ詐欺のようなもの。私ならあきらめます」と言った。
 男性がカードを体から離したのは、同月20日に医師会で行った神奈川県内のゴルフ場で、貴重品ロッカーに財布を預けた時ぐらいだ。カードとロッカーの暗証番号は誕生日の一部を使った同じ番号。警察は「ゴルフ場でスキミング被害に遭ったのだろう」と言った。
 これまでキャッシュカードのスキミング事件の捜査が進まなかった一因は、偽造カードを作られた被害者は銀行で、金を引き出された被害者はATMを管理する銀行という点だ。預金を引き出されても懐が痛まない銀行側の被害者意識は薄く、クレジットカード被害の補償が進んだ信販業界に比べ対策は遅れた。
 全国銀行協会は「顧客が暗証番号の管理さえしていれば、現金が引き出されることはない。番号が盗まれた原因がはっきりしない場合は対応できない」と説明していた。しかし被害の急増で昨年6月、銀行から被害届を出すことを申し合わせた。今月になって金融庁も重い腰を上げ、銀行法を改正して金融機関に被害者救済を義務付ける方向で検討している。
 被害に遭った男性は、「クレジットカードの買い物なら補償されるが、キャッシュカードにはない。引き出し限度額も青天井だった。なぜ利率が低い銀行に大切な金を預けているのか考えてほしい」と憤っている。【長谷川豊】
 ◇暗証番号盗難、責任どこに 銀行側「法的根拠」なし
 ほとんどの銀行は、スキミングなどによる偽造カード被害の補償をしていないのが現状だ。それでも、被害急増に伴い、対策が遅れていた銀行側も改善に乗り出した。
 東京三菱銀行は昨年10月、偽造が困難とされるIC(集積回路)キャッシュカードを導入。手のひらの静脈で本人確認ができる機能を付加した。また同行と三井住友、UFJの3行は、ATMでの引き出し限度額を引き下げたり、自由に設定できるシステムに変更した。みずほ銀行も3月から、ICカードを導入し同様の制度を採用する。
 しかし、ある大手都銀広報室は「どこまでが顧客の過失で、どこからが銀行の過失か法的根拠がなく、議論も進んでいないので現状では補償は難しい」と話す。別の大手都銀担当者も「被害の自作自演との区別が難しい。どのような手口でカードが偽造され、暗証番号が盗まれるのか、捜査で判明しない限り、対応しにくい」と話す。【宮川裕章】
(毎日新聞) - 1月19日15時5分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050119-00000052-mai-soci