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2005年01月13日(木) 00時00分

<電脳人> 通販への女の恨み 加藤寛一郎 東京新聞

 私は“電脳ダメ人間”である。一方家内や娘は電脳を利用する術(すべ)を心得ている。羨(うらや)ましい。その二人が、今回怨嗟(えんさ)の声を上げた。高みの見物を決め込んだ私だが、経緯を説明したい。

 娘がトイレ用ファンヒーターを贈ると言ってきた。夫婦への誕生祝いなのか、寝起きに脳卒中でも起こされたら困る、ということであったらしい。同じ申し出が、昨年もあったという。

 家内は冷暖房嫌いである。「夏の冷房は冷えすぎ、冬の暖房はむっとする」という。しかし、むげに断るのもと思い、同意した。ただし、費用は拙宅持ち、という条件をつけた。

 ヒーターは代金着払いの宅配便できた。梱包(こんぽう)を開けると、組み立て不良だろうと思うが、ヒーターの外枠を覆うプラスチック部分二カ所が浮き上がっていた。幻滅して、返品することにした。

 送ってきたのは通販最大手の一つだった。しかし、電話番号はどこにも記されていない。電話局に問い合わせても、わからない。娘が相手のホームページを調べ、返品方法を連絡してきた。ヒーターを返品する宅配便業者は、三時間後に現れた。

 家内は、私の仕事の電脳部分を処理していて、結構忙しい。宅配便業者とのやり取りや、受け渡しに待機を余儀なくされ、大いに不満だった。

 返品の場合、代金は金券で返される規則になっていた。家内の通販音痴を承知している娘は、現金による返金をメールで交渉し、成功しなかった。

 返された金券で、腹の立つ通販から何か買わなければならない。娘はご機嫌斜めだったようである。電話で家内に、こう伝えてきたという。「『電脳人』に書いてもらえば!」 (かとう・かんいちろう=東大名誉教授)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/dgi/20050113/ftu_____dgi_____001.shtml