2005年01月07日(金) 17時10分
自遊席:’05新春ワイド どケチ根性を見習おう /佐賀(毎日新聞)
暮れも押し迫ったある夜遅く、実家の母からの電話が鳴った。父あてに「変なはがきが届いたんだけど……」と不安げ。文面には「貴殿が通信販売で購入した商品の代金が未払い」とある。典型的な架空請求の手口だ。
入社して9カ月。主に事件事故を担当しているが、人の良すぎる佐賀んモンが、いわゆる「振り込め詐欺」や架空請求の被害に遭った原稿を書くたびに、ため息をついてきた。
警察庁の統計では、04年1〜10月に全国で発生した同様の詐欺事件は約1万6000件。被害総額は何と222億円に上った。例えは悪いが、破産が大騒ぎになった佐賀商工共済の負債額の約4倍。どれだけの憤りと落胆がこの222億円に込められているか、想像を絶する。
「お宅の夫が交通事故を起こし、妊婦が救急車で運ばれた」「娘さんが借金を返さないので東京に連れて行く」などと、安っぽいドラマのような設定。聞けば、なぜか大阪では際立って被害が少ないという。ケチな「浪花のおかん」は簡単にだまされないらしい。
私の実家は島根の山奥。近く還暦を迎える父あてのはがきには「民事訴訟・最終通告・強制執行」といった法律用語が並んでいた。ほんの一瞬でも田舎の両親が動転したかと思うと許せない。
差出人は東京の「山根総合法律事務所」とある。電話してみたが応答がない。インターネットで調べたら、ちゃんと架空請求業者リストに載っていた。お墨付きの悪徳業者だ。
05年、読者の皆さんの元に、都会から怪しいはがきや電話があるかもしれません。私もこれ以上、ため息の出る原稿を書くのはこりごりです。大阪人の図太さを見習っていこうではありませんか。
1月7日朝刊
(毎日新聞) - 1月7日17時10分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050107-00000054-mailo-l41