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中国の江沢民国家主席(当時)が98年11月に早稲田大学で講演した際、講演会に出席予定の学生ら約1400人分の名簿を、大学側が同意を得ずに事前に警視庁に提出したことがプライバシー侵害にあたるかどうかが争われた2件の訴訟で、最高裁第二小法廷(滝井繁男裁判長)は12日、「参加者の承諾を得ることは容易だったのに同意の手続きを取っておらず、開示はプライバシーの侵害で不法行為となる」との判断を示した。当時学生だった3人の損害賠償請求を退けた二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。
また、同じ争点で学生6人に1人1万円の損害賠償を命じた別の二審・東京高裁判決は支持し、早大側敗訴が確定した。
プライバシー権の基準などの一般判断は示されなかったが、同小法廷は学籍番号、住所、氏名、電話番号など「個人識別のための単純な情報」も「法的保護の対象で無断開示は違法」と初めて位置づけた。個人情報を取り扱う上で大きな影響を与えそうだ。
5裁判官のうち亀山継夫裁判官、梶谷玄裁判官の2人は「他人に知られたくないと感じる程度が低い情報だ。国賓の警備を担当する警視庁の要請に基づく名簿提供には正当な理由があり、同意を得なかった点で配慮を欠く面があっても、社会通念上許される限度を逸脱したとまでは言えない」と反対意見を述べた。
これに対し、3裁判官は「個人情報の秘匿性の程度、開示による具体的な不利益の不存在、開示の目的の正当性と必要性などの事情は(不法行為にあたるとした)結論を左右するに足りない」と多数意見を述べた。
名簿提出をめぐる二つの裁判では高裁段階の判断が「違法」と「適法」に分かれていた。その一つは、江主席の講演中に、中国語で書いた批判の横断幕を広げたり、ヤジを飛ばしたりして建造物侵入容疑で逮捕された学生3人(当時)が、その後大学側から受けた譴責(けんせき)処分の無効確認や損害賠償などを求めたもの。もう一つは学生6人による損害賠償請求訴訟で、最高裁ではいずれも名簿提供の適否に絞って審理された。(09/12 23:21)