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2008年11月30日(日) 08時01分

フジモリ氏 晴耕雨読の日々 笹川日本財団会長、ペルーの刑務所で面会産経新聞

 ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領はいま70歳で、大統領在任中に軍秘密部隊が起こした人権侵害への関与などを問われ、首都リマ郊外の刑務所に収監されている。11月中旬、同地を訪れて元大統領と面会した日本財団の笹川陽平会長によれば、「穏やかな表情で、諦観(ていかん)の心境にあるように思われた」という。

 リマ市内から車で40分たらず、地表がむき出しになった山岳地帯の麓に警察官用刑務所がある。塀に囲まれた500〜600坪ほどの敷地に建つ2棟の平屋の1棟が元大統領専用だ。以前の収監施設から移って3カ月、汚かった建物は自身の手で改造した。

 2人の再会は、平成17年10月に元大統領が翌年の大統領選出馬を目指し離日して以来3年ぶり。「肌の色つやもよく、明るく穏やかな表情が印象的でした」と笹川さんは話す。

 大工仕事の傍ら、2棟の建物の間を耕し、カボチャやイチゴを育てる。広い空き地には1500本ものバラも植えた。「農業大学の学長だったから、と笑っていました」。元大統領は今年4月、違法家宅捜索の罪で禁固6年などの判決が確定した。外出が禁止されている以外は厳しい監視の目もない。時に絵筆も走らせる晴耕雨読の生活が、表情をも変えたか。

 反フジモリ勢力の追及を逃れるべく、日本に事実上の亡命を果たしたのは平成12年11月。当時日本財団理事長だった笹川さんと会長の曾野綾子さんが物心両面から支えた。そのときは日本語を封印し、スペイン語でしか話さなかった元大統領も、笹川さん持参の日本酒を酌み交わし、2時間におよんだ語らいのすべてを日本語で通した。

 「週3回面会にくる孫がかわいくて、会うのが楽しみと相好を崩していました」

 4人の子供のうち、長女ケイコさんと二男ケンジさんがペルーに住む。2人とも政治を志し、ケイコさんは一昨年の選挙の際、リマ選挙区でトップ当選を果たした国会議員だ。民衆の人気も高く、次期大統領の有力候補でもある。

 そのケイコさんが車で15分ほどかけて、1歳になる娘を連れて通ってくる。「彼女は政治指南をうけたいらしいが、孫に夢中で、難しい話はしないそうです」

 後継者にも、孫にも恵まれ、不自由な中での自由を楽しむ様子に、すべてを諦観した姿が見える。ただ、ペルーでのフジモリ人気は依然、高いという。

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 「笹川陽平ブログ(http://blog.canpan.info/sasakawa)」でフジモリ元大統領との面会の予告編公開中。12月上旬に詳細がアップされる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081130-00000035-san-int