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2008年11月30日(日) 02時01分

東証不人気…海外企業の上場激減 23年ぶり低水準産経新聞

 東京証券取引所に上場する海外企業が激減している。今年は新規上場がいまだになく、加えて8社も撤退する見通しだ。このままいけば上場企業数は20社を割り込み23年ぶりの低水準となる。金融危機に伴う株式市場の低迷が原因だが、東証での自社株の売買が少ないことや、日本語での情報開示などの負担も海外企業にとって魅力低下につながっているようだ。

 東証1部の外国企業のうち、6月に英大手銀バークレイズが上場廃止したのを始め、8月に英石油メジャーのBPと米航空大手ボーイングが撤退。12月には独化学大手のバイエルなど4社が東証を去る。

 一方、金融危機で企業の経営環境が悪化したところに、世界同時株安が重なり、今年の海外企業の新規上場は依然ゼロのまま。今後予定もなく、年間を通じて新規上場がなければ5年ぶりとなる。

 この結果、東証に上場する海外企業は前年の25社から17社に減る見通しだ。東証で海外企業の上場が始まったのは昭和48年で、上場企業数が17社となるのは60年以来。ピークの平成3年12月には127社が上場しており、17年で7分の1にまで落ち込んだことになる。年間での「減少率」も32%で、過去最悪だった9年の17.2%を上回る。

 海外企業は本国への上場に加え、補完的に東証などの取引所に複数上場しているのが通例。しかしインターネット取引の普及で、投資家は本国市場にアクセスすることが容易になり、株式の売買も本国市場に偏る傾向が強まっている。こうしたなか東証での上場は、「日本語での情報開示や日本式の会計基準などでコストは余計にかかる」(市場関係者)点が、海外企業に嫌気されている。

 東証は昨年11月、日本版預託証券(JDR)制度を解禁した。海外企業の株式を裏付けとして信託銀行が発行する有価証券を株式と同様に取引できる制度だ。海外市場への上場が規制されている台湾や、インドなどの企業を誘致できる利点があるという。ただ、インドのタタ自動車などが関心を示していると伝えられたが、今のところ上場企業はない。

 東証が年明けから導入する、取引参加者を機関投資家などに限る「プロ向け市場」。英文での情報開示や国際会計基準でも上場が認められるため、「海外企業の上場のハードルが格段に低くなる」(東証)とされるが、海外のプロ向け市場も金融危機の影響で上場企業が激減している。

 現状のままでは、海外企業が東証へ上場する意義を見いだせなくなりかねず、アジアの中核市場を目指す東証としては、抜本的な対策が迫られそうだ。

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