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2008年11月30日(日) 01時40分

比の遺骨収集、政府見直し 「住民の証言重視」新方式に産経新聞

 先の大戦で約52万人が戦死し、今も約38万人の遺骨が未帰還になっているフィリピンの遺骨収集事業で、住民の証言を重視する「新方式」が導入され、今月26日、政府の収集団がここ数年では飛躍的に多い249柱の遺骨を持ち帰った。同国では日本政府が委託したフィリピン側の鑑定人が「旧日本兵の遺骨か否か」を判定してきたが、情報の減少に加えて、不明瞭(めいりょう)な判定が相次ぎ、収集事業が停滞していた。制度の見直しで同国での収集が進むことが期待される。(喜多由浩)

 新方式は遺骨の発見者や地主、村長らの証言から供述書を作り、状況などから「日本兵の遺骨とほぼ間違いない」と分かれば、公正証書にする。さらに、収集現場に同行したフィリピンの国立博物館の職員が聞き取り調査などで確認作業を行った上で、同国としての証明書を発行してもらう。

 11月中旬から下旬にかけて政府の収集団がフィリピン・セブ島に派遣され、この方式で島内の19カ所で見つかったすべての遺骨(249柱)を持ち帰った。中には2年前、旧日本軍の野戦病院があった場所で大量の遺骨が見つかりながら、鑑定人がほとんどを旧日本兵と認めず放置されたままの遺骨も含まれていた。

 海外での遺骨収集は、相手国が旧日本兵の遺骨と認めたものを、政府の収集団だけが持ち帰ることができる。鑑定人の制度は2003年に導入され、フィリピンでは、大学教授の鑑定人が文化人類学上の観点などから判定をしていた。ただ判定基準はあいまいで、状況や証言から旧日本兵と間違いないと思われる遺骨でも鑑定人によって、はねられるケースが相次いだ。

 今年3月には、遺骨の情報収集を行っているNPO法人「空援隊」(本部・京都市、杉若恵亮理事長)が、セブ島の洞窟(どうくつ)で、米軍の集中砲火で全滅したとみられる約150体分の遺骨を発見。その情報に基づき7月に政府の収集団が派遣されたが、鑑定人は、16体分しか日本兵と判定せず、明確な根拠も示さなかったという。

 このため「空援隊」を中心に新方式を構築。これを受けた厚生労働省も制度の見直しを決めた。来年1月には再び政府の収集団が派遣される予定だ。

 厚生労働省外事室の話「フィリピンでは民間団体とも協力しながら、今後、この方式で遺骨収集事業を進めていきたい」

 ■戦没者遺骨収集事業 先の大戦で本土以外で亡くなった約240万人の遺骨を収集するために政府が昭和27年から事業を開始、フィリピン、中部太平洋、ロシアなどから、これまでに民間で持ち帰ったものを含めて約125万柱が収集されている(今年3月末現在)。

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