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2008年11月30日(日) 00時39分

「犬の仇」不可解な動機解けるか 元厚生次官ら連続殺傷産経新聞

 元厚生次官ら連続殺傷事件は、小泉毅(たけし)容疑者=銃刀法違反容疑で逮捕=が警視庁に出頭してから29日で1週間。小泉容疑者は「飼い犬の仇(あだ)討ち」「官僚は悪」と一貫して供述しているが、34年前の心の傷が元次官を標的にした連続殺害計画につながるのか、不可解さは消えない。勾留(こうりゅう)期限の12月4日にも、さいたま市の山口剛彦さん(66)夫妻殺害で、埼玉県警が殺人容疑で再逮捕する見込みで、捜査の焦点は謎の多い動機の解明に移る。

 「おれが事務次官を殺した」。小泉容疑者は22日夜、レンタカーに血が付いた柳刃包丁や軍手、段ボールなどを積んで警視庁本部に出頭した。包丁の血痕が被害者3人のDNA型と一致したことなどから、警察当局は、小泉容疑者の単独犯との見方を強めている。

 小泉容疑者が語る動機は「愛犬を保健所に殺された恨み」で一貫している。実際、小学生時代に拾ってきた野良犬を父親が保健所に持ち込み、殺処分された経験を持つ。出頭翌日の23日に届いた父親あての手紙には処分された年月日、曜日まで克明に記している。

 「大学で勉強し、国を動かしている官僚が悪だと分かり、大人になったら仇を討とうと思った」とも説明。「今は話すことを一方的に聞いている段階」(警視庁幹部)だが、捜査本部は前例のない犯行の全容解明に向け、生い立ちから現在の生活実態まで慎重に捜査を進めている。

 殺害計画が具体化するのは、ナイフ類を集め始めた2、3年前とみられる。都内のコンピューター関連会社を辞めた時期と重なる。「職場を首になったのは社会が悪いからだ」と供述。その後は株取引などで生計を立てようとしたが、逆に約1000万円の預金を使い果たし、銀行ローンで数百万円の借金を抱えた。

 保健所の所管を厚生労働省と勘違いしたまま、昨夏ごろからは図書館の職員録で、元次官や元社会保険庁長官の住所を調べた。自宅との位置関係などから5人を選び、入念に下見を繰り返した。凶器は一番切れ味のいい柳刃包丁に決めた。

 「人生に未練がなくなった。恨みを晴らし、やり遂げた」。小泉容疑者は犯行を後悔する様子は見せないという。捜査本部は愛犬の殺処分も含め、長年かけて社会への不満を募らせ、生活苦から自暴自棄になったとの見方を強めている。

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