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2008年11月30日(日) 00時00分

指切断事故の少女、機能回復中国新聞

 船上での事故で右手親指を切断、接合手術をした山口県周防大島町東安下庄、安下庄中3年の柳原安奈さん(14)が、鉛筆を握れるまでに回復した。海底で指先を見つけたダイバーの善意、医師の熱意、周囲の人々の支え—。安奈さんは感謝を忘れず、リハビリに励んでいる。

 事故は10月11日午後2時すぎ、自宅近くの安下庄港で起きた。漁業の父芳雄さん(52)の漁船に乗り、漁の準備を手伝っていた際、手にしていたロープがスクリューに絡まった。激しく張ったロープと船べりとの間に親指を挟まれ、「痛い」と感じた瞬間、指先が白い手袋ごと海中へ。

 急を知った地元のダイビングクラブ会員で町職員山本克巳さん(35)=日前=と尾道市三軒家町の学生浜田悠希さん(23)が海に潜った。見つけたのは、船から東に32メートル、水深4メートルの海底。指先をタオルに包み、氷で冷やしながら、安奈さんは芳雄さんや母昌美さん(45)とともに救急車で岩国医療センター(岩国市)へ。約8時間の手術。担当した平川久美子医師(31)は「海に落ちたことで乾燥を防ぎ、塩分が消毒になったのではないか」と言う。

 しばらくは親指に感覚がなかったが、3週間後には、しびれを感じるようになった。今では字が書けるまでに回復した安奈さん。「人の思いやりを実感した。将来は人の世話をする仕事に就きたい」と福祉関係の道を考える。

【写真説明】母の昌美さん(左)と親指の回復を喜ぶ安奈さん

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200811300035.html