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2008年11月30日(日) 12時01分

裁判員制度:市民に「参加」どう影響? 伊藤紘基・地裁所長に聞く /岩手毎日新聞

 ◇導入秒読みの裁判員制度
 ◇社会とのかかわり直視
 来年5月までに導入が予定される裁判員制度の開始まであと半年。裁判員候補者に県内から1800人が選ばれた。最高裁から郵送された通知が間もなく届く。賛否両論が渦巻く裁判員制度だが、開始まで秒読み段階を迎えた。「国民に分かりにくい」「長期間に及ぶ」といった批判もある従来の裁判は、制度導入でどのように変わるのだろうか。盛岡地裁の伊藤紘基所長=写真=に聞いた。【山口圭一】
 ——最高裁司法研修所が11月、裁判員制度の下での控訴審の在り方について、1審の判断を重視すべきだとする研究報告の骨子をまとめました
 1審(の裁判官)は安心して裁判をできるのではないでしょうか。国民に参加していただいて、結論を出すわけですから、控訴審も尊重してもらわないと。そういう方向性を示したと思います。
 ——一方、量刑が重くなったり、裁判ごとにばらつきが出るのでは、と懸念する声もあります
 模擬裁判を見てきた感想ですが、国民の皆さんは冷静で理性的。よく見てらっしゃると思います。裁判官がリードすることもなく、おのずと(結論が)落ち着くのではないでしょうか。
 ——裁判員の負担を軽くするため争点や証拠を厳選すると言われていますが、「国民負担を減らす」ことが錦の御旗(みはた)になり厳選し過ぎることはありませんか
 弁護士、検察官それぞれの立場で「ここまで必要なんだ」と主張される。(裁判所は)その中でのかじ取りになる。もちろん国民負担の軽減も考えなくてはならないが、バランスだと思います。
 ——バランスと一口で言いますが、非公開で争点を整理する公判前整理手続きでは懸念が残ります
 それは、公判の審理を見ていただくしかない。マスコミも国民の視点で公判をすべて通して取材し、検証していただくことが大事だと思います。
 ——市民が裁判員を体験し、評議に参加することで社会にも影響があるでしょう
 裁判員になると、現実を目の前に突き付けられ、議論することになる。犯罪と社会の関係や犯罪者の更生などを考えるきっかけになる。国民一人一人が社会とのかかわりを考えるようなプラスの方向性になるよう期待しています。
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 ■ことば
 ◇裁判員制度
 殺人罪など重大事件に関する刑事裁判の第一審で、一般の国民が加わり、有罪・無罪や量刑を決める制度。国民から選ばれた裁判員6人と職業裁判官3人の計9人が評議する。一つの裁判には、抽選や面接による選任手続きを経て、裁判員6人と補充の2人、計8人が候補者から選ばれる。
 県内で開かれる対象事件の裁判は年間20件程度と見込まれる。昨年度実績(22件)を基にした盛岡地裁の試算によると、有権者のうち1年間で裁判員に選ばれる確率は6300人に1人という。

11月30日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081130-00000042-mailo-l03