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2008年11月30日(日) 01時40分

舞鶴の高1女子殺害、異例の捜査手法 念頭に裁判員制度?産経新聞

 京都府舞鶴市の高1女子殺害事件で、窃盗罪で起訴された男(60)の自宅を殺人などの容疑で捜索した京都府警の「捜査手法」に注目が集まっている。関与を示す物証や供述がない中での捜索が批判され、弁護人立ち会いという異例の展開となったが、背景には「裁判員制度がある」と識者や関係者は語る。自白を前提にするよりも、まず物証を押さえるやり方は制度を見据え、より強まる“流れ”という見方だが、「制度をにらむならば、より捜索は慎重であるべきだ」という声もある。

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 「弁護人の反発は想定内だった」。ある府警幹部は、捜索予定日に弁護人が準抗告し、いったん捜索が延期された異例の事態にも強気の姿勢を崩さなかった。府警は捜索にあたり、警察庁や検察当局とも協議を重ねており、強引ともいえる捜査手法への批判も、弁護士立ち会いも「折り込みずみだった」と言う。背景にあるのは捜査の行き詰まりとともに「物証」へのこだわり。弁護人が立ち会うことにより、証拠がみつかった場合は信用性も高まる。

 一連の捜査で府警は被害者の所持品だけでなく、今回の捜索の決め手となった防犯カメラの映像も公開してきた。それ以降も捜査を進める上で不利になりかねない情報を積極的に報道機関に流している。府警の捜査幹部は「重要事件の報道対応としては異例の展開だろう」と振り返るが、公開度を高める裁判員制度をにらんだ対応とみられる。

 府警は今月15日に窃盗容疑で男を逮捕して以降も、「(窃盗)容疑と無関係な証拠品の押収や検証はしていない」と強調し、10日間の勾留(こうりゅう)中に殺人事件には「一切触れなかった」としている。

 これらの捜査手法について元最高検検事の土本武司・白鴎大法科大学院長(刑事法)は「自白を強いるのではなく、まず物証を押さえる。そのやり方は裁判員制度をにらんだ厳密な手順といえる」と評価。井戸田侃・立命館大名誉教授(刑事法)も「自白を強いるより、まず物証を押さえるやり方は本筋で常道といえる」と理解を示す。

 ただ、土本さんは「捜索で物証が見つからなかった場合、どう捜査を続けていくのかが問題になる」と指摘。また、ジャーナリストの大谷昭宏さんは「なんとしても検挙したいという熱意は分かる。だが、こんな捜索は禁じ手で、やっちゃいけない。裁判所も裁判員制度をにらんで安易に捜索令状を出すのは慎むべきだ。しかし制度が始まれば、今回のようなケースが再び出る可能性もある」と話す。

 裁判員制度では捜査の違法性が問われれば、裁判員の心証が悪くなる恐れもあり、京都府警の幹部は「だからこそ捜索までには相当の時間を要した」と話す。と同時に、この幹部は「(裁判員制度をにらみ)事件を世間に印象づけておきたいという思惑が(捜索の背景に)あったのではないか」とも語っている。

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