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2008年11月30日(日) 23時37分

【ムンバイ同時テロ】残党なお逃走 市民の不安続く産経新聞

 【ムンバイ=宮野弘之】「インドの9・11だ」。インド西部の商業都市ムンバイの市民は、先月26日に発生し29日に制圧された同時テロ事件について、2001年の米中枢同時テロを上回る衝撃として受け止めている。テロリストの残党はなお逃走中で、30日も市内のいたるところで警官や治安部隊の姿がみられた。

 パティル内相は30日、同時テロを防げなかった責任をとり辞任した。後任の内相にはチダムバラム財務相が就任、財務相はシン首相が兼任する。

 また、フランス通信(AFP)によると、治安当局者は「(ホテルなどを占拠したテロ集団から)具体的な要求はなかった」と説明しており、最初から無差別殺人を狙ったテロだった可能性が出ている。

 ムンバイを州都とするマハラシュトラ州の当局者も「これまでの捜査の結果、(テロ集団は)5000人を殺害する計画だったと考えられる」と指摘した。

 タージマハルホテル近くで、テロの標的となったカフェ・レオポルトの向かいに住む元海軍将校のアラン・クートさん(70)は26日夜、大きな爆発音と銃声で事件に気づいた。

 驚いて外に出ると、外国人女性が駆け込んできたという。クートさんによると、彼女はドイツ・ルフトハンザ航空の乗務員で、カフェで食事中にテロに遭遇。近くのテーブルにいた若い男が食事を終えると急に立ち上がり、手投げ弾を投げ、自動小銃を乱射した。彼女はテーブルの下に隠れ、銃声がとぎれたので逃げてきたという。

 クートさんは「力で政治的主張を通すことはできない。憎しみでは何も解決はできない」と語った。

 30日、タージマハルホテル近くまで様子を見に来ていたシーク教徒のライナさん(76)は、事件はパキスタン政府が引き起こしたと憤りをあらわにする。

 「経済的にもうまくいっているインドをねたんだのだ。パキスタンとは断交すべきだ」と怒る。また、「与野党を問わず、政治家はテロ対策に真剣ではなかった」と政治に対する不信感を強調していた。近くにいたイスラム教徒の男性は、「話をしたくない」と足早に立ち去った。

 一方、テロリストが上陸したとされる、西海岸の漁港近くに住む漁師の男性(ヒンズー教徒)は、「残念なことだ。国のために良くない」とだけ話した。

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