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2008年11月30日(日) 23時35分

コメ流通の監視強化、原産地表示を拡大・取引記録も義務化読売新聞

 農林水産省がコメ流通の監視強化に乗り出した。

 流通ルートが特定できなかった事故米問題の反省を踏まえ、農家から小売店まで取引情報の記録を義務付けるほか、店頭で表示している原産地情報をコメ製品に拡大する方向だ。コメや関連商品の流れを徹底的にチェックして消費者の不安感を取り除く狙いだが、負担増を警戒する取引業者や外食産業などの反発は根強い。食の安全・安心を確保する監視策を実現できるか、課題も多い。

 ◆二つの柱◆

 監視強化の柱となるのは、店頭での原産地表示の拡大だ。現在は日本農林規格(JAS)法によって、精米、玄米、もちだけが対象。国内産地などの情報がパッケージに表示されている。

 新制度では、〈1〉おにぎりや弁当、すし、定食などご飯として提供する商品〈2〉せんべいや団子などコメを主原料とする商品〈3〉米粉パンなどコメが原材料であることが特徴である商品−−の3分野が加わる予定だ。

 新制度が導入された場合、外食店で提供する丼物、コンビニエンスストアのおにぎりなども原料米の原産地表示が必要となる。メニューや店内の壁、シールなどの方法が想定される。

 もう一つの柱である販売記録の保管を義務付ける措置は、農家からJA、卸、食品メーカー、外食店、小売店までコメ取引にかかわるすべての段階で監視の目を光らせる狙いだ。内容は、コメやコメ製品の品名、数量、取引日、相手、産地と幅広い。

 農水省が流通ルートの徹底チェックを検討するのは、事故米問題を調査した際、帳簿が不備な会社があったほか、取引記録の提供拒否などで徹底した解明ができなかったためだ。

 ◆実現性は不透明◆

 監視強化案に対し、難色を示す取引業者は少なくない。農水省が10月に発足させた有識者による「米流通システム検討会」でも、業界関係者から「事故米問題は農水省の甘いチェック体制が原因だった。民間に新たな負担を押し付けるのは納得できない」と反発する声が相次いだ。

 こうした不満の背景には、取引業者によっては、農水省が想定する監視強化策に十分対応できないという事情がある。

 例えば、新たに店頭での原産地表示が必要となる加工食品の場合、供給量や品質を安定させるためコメを複数の産地から仕入れていることが多く、変更の度にパッケージを作り直さなければならなくなる。

 小規模な弁当店や食堂などは原産地表示に慣れておらず、顧客に十分な情報提供できるか不透明との指摘もある。

 農水省は監視強化に向けて、関連法案を来年の通常国会に提出したい意向だ。しかし、新制度の骨格は定まったものの、導入時期や具体的な見直し対象など詳細な青写真は描けていないのが実情だ。

 店頭での原産地表示を新たに義務付ける商品の範囲についても明確ではない。検討会では、酒を対象にするかどうか問題提起されたが、酒類を担当する財務省が独自に検討を進めるなど十分な調整がついていない。

 コメは見た目に大きな差がなく、安価に仕入れた他用途のコメを主食用と偽って売る不正行為が起きやすい。今回の監視策でこうした不正を防止できるかどうかも課題になりそうだ。(幸内康)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081130-00000042-yom-bus_all