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2008年11月30日(日) 20時19分

こんな法律いらない!国の地方支配に大ナタ 地方分権委産経新聞

 政府の「地方分権改革推進委員会」(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は2日、地方自治体を法律や政令などでしばる制度の見直し案を発表する。8日にも策定する第2次勧告に明記し、地方の裁量を制限する現行制度に大ナタを振るう。国による地方自治体への過剰規制は「こんなものまで国が決めるのか?」と首をかしげたくなるほどのオンパレードなのだが、既得権益にしがみつく中央省庁の抵抗は根強い。分権委は麻生太郎首相の後方支援を頼みに正面突破の構えだが、分権改革の“本丸攻め”は容易ではなさそうだ。(酒井充)

 ■原則廃止

 国の法令などによる「しばり」の見直しは、国土交通省地方整備局など、国の出先機関の統廃合と並ぶ第2次勧告の最重要課題だ。分権委は2日、法令すべての見直し対象について原則廃止を打ち出す方針だ。

 出先機関の見直しが、中央省庁のスリム化を狙う行政改革の意味合いがあるとすれば、国の「しばり」の見直しは、地方自治体の裁量を増やす住民の目線に立った改革だ。見直し対象は法律で535、条項で約1万に上る。分権委はこうした「しばり」を法令による義務付け・枠付け問題として、改革のたたき台づくりを進めてきた。

 議論が大詰めを迎えた11月中旬、分権委は国交省が「重大かつ明白な危険から国民を守るため」と主張する道路構造の「しばり」に切り込んだ。

 西尾勝委員長代理(東京市政調査会理事長)は語気を強めてこう語った。

 「国は地方の歩道の幅や標識の文字の寸法まで(法律や政令で)基準を定めている。これが『重大かつ明白な危険に対して国民を保護する条項』に該当するとは到底理解できない!」

 国は、道路の整備や管理を目的とした道路法で、歩道や路面などの基準を規定している上、具体的な数値基準を道路構造令で定めている。「安全上必要」という大義名分はあるが、分権委はあまりの細かさに「やりすぎだ」と断じる。

 ■地方の実情無視

 道路に関する国のしばりの不可解さもさることながら、幼稚園や保育所などの設置基準も、実態とかけ離れ「住民無視」(全国知事会)がまかり通っている。

 例えば、文科省は省令で「幼稚園は原則2階建て以下」、園舎の面積は「320+100×(学級数マイナス2)平方メートル」という数式で最低基準を命じている。

 現在、保育行政をめぐっては、核家族化や働く女性の増加で公的な保育の需要が高まる一方で、都市部では広い用地を確保しにくいなど、自治体ごとに問題が多様化している。国の規制は地方の実情に応じた保育行政を「迅速に展開できない元凶」(全国知事会)となっている。

 「なぜ詳細な基準を国が定める必要があるのか」

 幼稚園の設置基準をめぐる議論で、分権委側が文科省側にこうただすと、文科省は、「教育と安全に配慮した最低限の設置基準が必要」と紋切り型の回答に終始した。たまりかねた丹羽氏は、「官僚は(どうやったら法令などをなくせるかという)できることではなく、できない理屈をこねる天才だ」と皮肉った。

 分権委の小早川光郎東京大学大学院教授は「地方自治体が住民にどういうサービスを行うかは条例で決定し、国は助言や勧告にとどめるべきだ」と語る。

 首相は11月初め、丹羽氏に対し「保育所などの話はどう考えたって地方の裁量でやれる話だ。思い切ってやってほしい」と分権委を後押ししたが…。



 国による「義務付け・枠付け」 本来、地方自治体が実施する行政、事務に関し、国が法律や法令、省令で細かく規定している制度。地方分権改革推進委員会は国が地方自治体をしばるこうした制度を義務付け・枠付けと呼ぶ。「義務付け」が個別法令による地方自治体への事務規制であるのに対し、「枠付け」は事務事業の執行方法に関する事務を規制している。これらが地方自治体の行政に対する裁量を損なっているとして、自治体側が廃止や緩和を求めている。

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