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2008年11月30日(日) 08時04分

【あなたが裁く 迫る裁判員制度】候補者に通知 問い合わせ殺到、半数辞退の質問産経新聞

 ■「イヤだ」苦情も

 来年5月の裁判員制度開始に向け、全国約29万5000人の裁判員候補者に通知が届き始めた29日、最高裁は問い合わせに答える候補者専用のコールセンターを開設した。来年1月31日まで、全国からの電話に対応する。この日は午後6時の締め切りまで、ほぼ絶え間なく計約870件の問い合わせが殺到したが、ざっと半数が「辞退」に関する質問。最高裁は「制度の意義を説明し、協力と理解を求めたい」と話すが、まだ国民の理解は十分とはいえそうにない。

【写真】こんな封筒で届きます 候補者に名簿記載通知発送

 この日、東京・赤坂のセンターでは午前9時から、オペレーターが候補者からの連絡に備えた。最初の電話は午前10時20分ごろ、裁判員制度の趣旨を尋ねる北九州市の女性からだった。午後に入って電話は増え、約50人のオペレーターが対応に追われた。

 問い合わせは「どのような場合に辞退できるか」が全体の約25%を占めた。これに「辞退できる重い病気やけがとは」「辞退できる70歳以上とはいつの時点か」など、「辞退」に絡んだ質問をあわせると全体の半数近くにのぼった。ほかには制度の趣旨や裁判員の選ばれ方、調査票への回答方法などが多かったが、「裁判員を務めたくない」「候補者名簿から削ってほしい」などの苦情も約40件あり、30分ほど粘るケースもあったという。

 制度をほめる電話は1件だった。

 センター設置にあたって、最高裁は数百項目の想定Q&Aを用意。電話を受けるオペレーターは11月初めから研修を始めた。経験豊富なオペレーターをリーダーに、法律に明るい裁判所元職員らを専門オペレーターに起用した。センター設置の総事業費は、負担する電話料金を別にして、1億1000万円という。

 最高裁事務総局の大西直樹参事官は「センターが国民のみなさんとの初めての接点。質問に一つ一つ、丁寧に誠実に答えたい」と話している。

 センターの電話番号は候補者だけに知らされているが、日本司法支援センター(法テラス、TEL0570・078374)も制度についての質問を受け付ける。

                  ◇

 ■誰になら話していい? 家族、職場ならOK

 裁判員に選ばれる可能性がある候補者の多くに29日、通知が届いた。最高裁から届いた封筒には、「調査票」やマークシート形式の「回答票」が入っている。どれもこれも初めて目にするものばかりで心配にもなるはず。そうなれば、不安は共有したくなるもの。家族に、同僚に、ブログでみんなに…。誰にまでなら話してもいい?

 通知を受け取ったら、もう裁判員候補者。すると裁判員法のこんな規定が問題になる。「何人も裁判員、裁判員候補者もしくはその予定者の氏名、住所、その他個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない」。そもそも、不当な圧力から裁判員を守るためにつくられた規定だ。罰則規定はない。

 「何人も」とある以上、それには候補者自身も含まれる。次に問題になるのは「公」の考え方。最高裁関係者は「線引きは難しい」と認めながらも、「不特定多数に対し、個人が特定できるようなかたちで公表するのは違法」と説明する。

 たとえば、家族の間で候補になったことを話しても構わない。職場の上司や同僚に打ち明けるのも基本的には大丈夫だという。

 では、このところ急速に広まってきたインターネットのブログはどうか。匿名なら問題ないように思えるが、そこに書かれた別の情報とつきあわせて個人が分かるようなら、グレーゾーン。もちろん、実名のブログなどで公表するのはダメだ。

 今回、通知された候補者としての立場は来年12月末まで続く。

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