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2008年11月30日(日) 08時03分

カイロ最新事情 誕生から30年 コーヒーかすを再利用、原料に産経新聞

 朝晩の冷え込みが厳しくなると、重宝するのが使い捨てカイロ。スーパーなどの売り場にはすでに、従来の手足を温める定番商品から、首、肩、腰、目元専用など消費者ニーズに合わせて多彩な商品が勢ぞろいしている。今年は、日本生まれのこの便利な保温具が誕生して30年。冬の必需品として、進化を続けるカイロの最新事情を探った。(中曽根聖子)

【写真】使い捨てだけじゃない…かわいい“充電式カイロ”

 日本カイロ工業会の調べでは、平成19年度の販売総数は約16億2000万枚。1人10枚以上使う計算だ。稲垣恭介事務局長は「最近は防寒用に加え、エアコンの普及により、夏の冷え対策や生理痛の緩和目的で年間を通して使う女性も少なくない。地球温暖化という逆風の中でも、潜在的な需要は大きい」とみる。

 業界大手の白元(東京)の調査では、カイロの使用目的として最も多いのは「レジャー」(93・1%)や「外出」(77・4%)だが、「痛みの緩和」「疲労回復」「リラックス」を挙げる人も多い。

 多様化する需要に合わせ、メーカー側はさまざまな新商品を開発。現在、市場に出回るカイロは150種類以上に上る。手足を温める定番商品に加え、最近は首、肩、腰、ひざなど部位に特化した商品が相次いで発売されている。

 桐灰(きりばい)化学(大阪)が今年発売した「血流改善 肌にはるコリほぐシート」(医療機器)は、患部に直接はるタイプ。腰用は45度、肩用は47度と、血流改善に最適な温度を6時間持続させ、患部のコリをほぐし、痛みを和らげる。

 白元も、体の湾曲した部分にぴったりと密着させ、温感を高める立体形状の商品を販売している。「ホッカイロひざ用」は、ひざの曲げ伸ばしがしやすいようプリーツ加工を施したサポータータイプ。「足全体用」は1枚で足裏からつま先の上まで包んで温め、足先のつらい冷えを解消する。目元専用「ホッカイロ アイピロー」は読書や勉強、運転の休憩時に便利。アイマスク型の立体形状で疲れた目元をじんわりと温めるとともに、ラベンダーの香りのアロマシートでリラックスや癒やし効果も。

 桐灰化学マーケティング部の中村聖一郎さんは「カイロは防寒から、温熱による治療系、健康系へと確実に進化している」と話す。

 消費者の環境意識が高まる中、21年1月にはリサイクル商品も登場する。業界初の取り組みとして注目を集めそうだ。

 使い捨てカイロは、鉄粉が空気中の酸素と反応して酸化するときの熱を利用。その酸化反応を促進させるために使われるのが活性炭だ。今回、日本コカ・コーラ(東京)と白元が始めたプロジェクトでは、缶コーヒー「ジョージア」の製造工程で排出されたコーヒーかすを活性炭の原料に再利用し、白元の「ホッカイロ」の原材料の一部として使う仕組みだ。

 白元の江原純一さんは「技術的なめどがついたので実用化に踏み切った。今後も付加価値を高め、一歩先をゆく商品を開発していきたい」と意気込んでいる。

 ■ルーツは温石

 カイロは、一日の最低気温が5度以下になると、売上額が急激に増える。漢字で「懐炉」と書き、そのルーツは石を温めて懐に入れた江戸時代の「温石(おんじゃく)」にさかのぼる。

 明治時代に入ると、麻殻や炭粉を袋に詰めて容器の中で燃やす「懐炉灰」、大正時代にはベンジンの気化ガスと白金の触媒作用で燃焼させる「ベンジンカイロ」が登場した。

 その後、袋から取り出して、振るだけで温かくなる「使い捨てカイロ」が誕生したのは昭和53年。スキーや屋外作業など、どこでも携帯できる利便性から一気に普及し、日本の冬に欠かせない存在になった。

 12月1日は「カイロの日」(日本カイロ工業会)。

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