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2008年11月29日(土) 00時00分

辞退希望の理由、参加困難な月 記入読売新聞

 来年5月に始まる裁判員制度に向けて、28日、裁判員候補者に選ばれたことを知らせる通知書が一斉に発送された。受け取った人は何に注意すればよいのか。今後、どのような手順を踏むことになるのだろうか。(社会部 足立大、稲垣信)

■調査票

 来年の裁判員候補者になった29万5027人に、29日から通知書が届く。B4判より少し小さい封筒には、制度を説明したマンガ小冊子やパンフレットなど9点が同封されているが、重要なのは調査票だ。

 調査票の狙いは、なるべく早い段階で個々の候補者の事情を把握し、裁判員になれない人や辞退が認められる人には、裁判所に来てもらわなくて済むようにすること。調査項目は、大きく分けて三つある。

 一つ目は、裁判員になれない職業に当たるかどうかを調べる設問だ。例えば、国会議員や自治体の長は三権分立の観点から、自衛官は緊急事態への対応を優先する必要性から裁判員になれない。候補者は選挙人名簿から無作為抽出で選ばれているので、こうした人にも通知書が届く可能性がある。裁判員になれない人は、マークシートの回答票にチェックを入れ、職業を証明する書面を添えて返送することになる。

 二つ目は、学生や70歳以上の人、重い病気やけがの人らで、辞退を希望するかどうか。こうした人は、希望すれば必ず辞退が認められるため、回答票に記載したうえで、学生証のコピーなどを添付して返送すると、裁判所から呼び出されることはない。

 三つ目は、辞退を希望する特定の期間があるかどうか。裁判員法は、重要な仕事や冠婚葬祭などの用事がある人は、辞退が認められるとしている。

 例えば、1人で事業を運営しているような人は、まず、マークシートの中から参加が特に難しい月を選んでチェック。さらに理由を列挙してある項目から「少人数」という選択肢にチェックを入れるなどしたうえで、「具体的な事情」を記載するスペースに、辞退を希望する理由を書き込む。

 参加が難しい月については2か月まで選ぶことができ、各地裁の裁判官は今後、個別の事件ごとに裁判員候補者を選ぶ際、回答票の記載を参考にし、辞退を認める場合がある。

 最高裁刑事局は、「なるべく具体的に書いて返送してもらえれば、裁判所は辞退を認めるか判断しやすくなり、国民の負担の軽減につながる」と話している。

ブログで公表禁止 ■話したらダメ?

 裁判員法は、裁判員候補者の氏名や住所など個人情報を「公にしてはならない」と定めている。裁判員のプライバシーを守り、不正な働きかけや脅迫を受けないようにすることが目的で、罰則はないが、通知書を受け取った候補者本人が、そのことを不特定の人に明らかにすることも禁じている。

 明らかに問題となるのは、インターネットの掲示板やブログへの掲載。集会などで、通知を受けたことを明らかにすることも認められない。また、行きつけの飲食店で主人に伝えることは許されても、ほかの客の耳に入って不特定の人に伝わる可能性があり、注意が必要だ。

 ただし、家族や親類、一定の範囲の職場の人に明かすことは認められる。会社員が今後、裁判所から呼び出しを受けた場合、休暇の申請などのため、上司や人事担当者などに伝えることや、中小企業経営者が重要な取引先に明かすことも許される。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081128-033595/fe_081129_01.htm