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2008年11月29日(土) 23時53分

裁判員候補者に通知届く 「辞退」問い合わせ半数産経新聞

 来年5月の裁判員制度開始に向け、全国約29万5000人の裁判員候補者に通知が届き始めた29日、最高裁は問い合わせに答える候補者専用のコールセンターを開設した。来年1月31日まで、全国からの電話に対応する。この日は午後6時の締め切りまで、ほぼ絶え間なく計約870件の問い合わせが殺到したが、ざっと半数が「辞退」に関する質問。最高裁は「制度の意義を説明し、協力と理解を求めたい」と話すが、まだ国民の理解は十分とはいえそうにない。

 この日、東京・赤坂のセンターでは午前9時から、オペレーターが候補者からの連絡に備えた。最初の電話は午前10時20分ごろ、裁判員制度の趣旨を尋ねる北九州市の女性からだった。午後に入って電話は増え、約50人のオペレーターが対応に追われた。

 問い合わせは「どのような場合に辞退できるか」が全体の約25%を占めた。これに「辞退できる重い病気やけがとは」「辞退できる70歳以上とはいつの時点か」など、「辞退」に絡んだ質問をあわせると全体の半数近くにのぼった。ほかには制度の趣旨や裁判員の選ばれ方、調査票への回答方法などが多かったが、「裁判員を務めたくない」「候補者名簿から削ってほしい」などの苦情も約40件あり、30分ほど粘るケースもあったという。制度をほめる電話は1件だった。

 センター設置にあたって、最高裁は数百項目の想定Q&Aを用意。電話を受けるオペレーターは11月初めから研修を始め、経験豊富なオペレーターをリーダーに、法律に明るい裁判所元職員らを専門オペレーターに起用した。センター設置の総事業費は、負担する電話料金を別にして、1億1000万円という。

 最高裁事務総局の大西直樹参事官は「センターが国民のみなさんとの初めての接点。質問に一つ一つ、丁寧に誠実に答えたい」と話している。

 センターの電話番号は候補者だけに知らされているが、日本司法支援センター(法テラス、(電)0570・078374)も制度についての質問を受け付ける。

 ■候補者のおもな質問と最高裁の回答

Q:裁判員を辞退できるのはどのような場合ですか

A:広く国民のみなさんに参加してもらう制度なので、原則として辞退できませんが、法律では(1)70歳以上の人(2)地方公共団体議会の議員(会期中のみ)(3)学生や生徒−などの辞退事由を認めています。重い病気やけが、親族らの介護や養育、妊娠中や産後などやむを得ない理由は認めています

Q:70歳以上とはいつの時点ですか

A:制度が始まる来年5月21日現在です

Q:仕事が忙しいというだけで辞退できますか

A:単に忙しいだけでは辞退できませんが、重要な仕事をあなたが処理しなければ大きな損害が生じる場合は認められます

Q:裁判員制度とはどのような制度ですか

A:国民に刑事裁判に参加してもらい、被告人が有罪か無罪か、またどのような刑にするのかを一緒に決めてもらう制度です

Q:裁判員はどのように選ばれるのですか

A:今回通知された方のなかから、事件ごとに候補者を選び、裁判所で候補者から裁判員を選ぶ手続きを経て6人の裁判員が選ばれます。

Q:通知に同封されていた調査票には回答や返送の義務はあるのですか

A:調査票は返送義務はありません。「裁判員になれない方」「辞退希望をする方」を事前に把握するものなので、当てはまらないときは提出する必要はありません

Q:候補者名簿に登録されたら、必ず裁判所に行くことになるのですか

A:今回の通知は翌年に裁判員になる可能性があることを事前に伝え、心づもりをしてもらうために送ったもので、この段階ではすぐに行く必要はありません

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