記事登録
2008年11月29日(土) 21時48分

<ビッグ3>厳冬デトロイト 商店閉まりコックも解雇毎日新聞

 米3大自動車メーカー(ビッグ3)がそろって存続の危機に立たされている。最大手ゼネラル・モーターズ(GM)はかつてアメリカ、世界の製造業の象徴といわれ、経営破綻(はたん)すれば関連産業を含めた影響は計り知れない。従業員や販売店、ともに歩んできたデトロイト周辺の住民を不安に陥れ、議会は救済法案の審議をめぐって紛糾している。デトロイトから自動車業界の迎えている厳しい冬を報告する。

 「自動車業界が救済されなかったら、店をたたむよ」。自動車の街、ミシガン州デトロイト近郊ウォーレン市でギリシャ料理店を営むアントン・ルジュレイさん(32)はため息混じりに話した。

 市内にあるGMの研究開発拠点、技術センターそばに店をオープンしたのは昨年7月。しかし、GMの人員削減が相次ぎ、売り上げは半分に減った。同じ商業施設に入居していた美容院、文具店、ギフトショップも相次いで店を閉じた。

 ルジュレイさんは、3人のコックを雇っていたが、給料を支払えなくなって解雇し、自分で調理している。「朝7時に開店したらGMの従業員が50人は来たのに、今は一人も来ない。最悪のタイミングで店を出した」と嘆いた。

 同州にはビッグ3の組み立て工場が計15カ所ある。自動車関連産業は、人口約1000万人のうち2割超が従事し、州内総生産(3666億ドル)の約1割を占めているだけに影響は大きい。ウォーレン市のあるマコーム郡は、自動車不況による来年の税収不足に備え、郡職員の約1割にあたる280人削減の検討に入った。

 GM本社ビルの飲食店に昼食を取りに来たロン・バイヤーさん(42)の勤めるバス会社は、収入の半分近くが自治体の資産税収からの補助金。「GMがつぶれたら、会社もつぶれるよ」と語った。

 同州センターライン市の自動車販売会社社長、エド・リンキーさん(68)は「売り上げ台数は(去年より)15〜20%減り、先月は金融事情の悪化で25〜30%ダウンとさらに悪化した」と打ち明けた。全従業員110人に、GM救済の政府案を支持するよう議会に求める手紙を出すよう指示した。「救済ではなく、融資だ。GMはお金をもらうのではなく、借りて政府に返すんだから」と、「救済」の大見出しでの報道にも注文を付ける。

 GMに23年間勤め、5月に部品工場の労働組合支部長になったガーナ・グッドウィンダイさん(46)は「ローンを抱えたまま、家を手放さなければいけないのでは、と不安にさいなまれる人も多い。自動車産業がなくなれば、ミシガン州が死ぬのに等しい」と訴えた。【デトロイト(米ミシガン州)吉富裕倫】

 ◇ことば ビッグ3

 米デトロイト市周辺に本社を置くゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラーの米自動車大手3社の総称。日欧メーカーに押され競争力は低下。フォード、クライスラーは世界販売台数でトヨタ自動車に抜かれ、08年にはGMもトヨタに首位を奪われる可能性が高い。3社はシェア低下の影響を、利益率の高い大型車の販売強化で補ってきたが、ガソリン高や金融危機の影響で販売不振が深刻化した。

 GMは7〜9月期決算まで5四半期連続の赤字に沈み、債務超過は599億ドル(約5兆8000億円)。手元資金は162億ドル(約1兆6000億円)と3カ月で2割超減少、来年半ばには枯渇しかねない事態になった。3社は、米政府と議会に資金繰りのため金融支援を要請している。

【関連ニュース】
北米国際自動車ショー:日本メーカー3社、出展見送り
米GM:T・ウッズとの契約打ち切りへ 経費削減理由に
GM:がけっぷち…12月2日までに米議会へ再建策
GM:北米4工場の操業停止へ…12月と1月に1週間
米GM:破産法申請での再建も視野 米紙報道

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081129-00000094-mai-bus_all