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2008年11月29日(土) 03時06分

年金改ざん手口、職員代筆や三文判で偽装…調査委報告書読売新聞

 「証拠が残らないようシュレッダーで破棄した」「三文判で(書類を)偽造した」。厚生年金記録の改ざん問題で、28日公表された弁護士らによる調査委員会の報告書には、アンケートに対して不正を「告白」した職員らの証言が並んだ。「(社会保険事務所の)現場レベルでは組織的」と断罪された改ざんはどのように繰り返されたのか。

 ◆改ざんの手口

 報告書が「現場では組織的」と判断したのは、一見して不自然な訂正処理とわかる書類に、事務所長や課長らが決裁印を押していたケースなどがあったためだ。不自然な書類には、保険料徴収の担当課だけでなく、複数の課の職員も携わったケースが相当数あった。

 「明文化された改ざんマニュアルはない。仕事を覚えていく中で当たり前に身につける、恒常的な業務の一環」。読売新聞の取材に対し、複数の社保事務所職員がそう証言している。

 ◆悪質

 2000年、年金支給額の算定基礎となる標準報酬月額(ほぼ月給に相当)が3か月さかのぼって訂正されたケースでは、事業主と従業員はいずれも社保事務所の元職員。担当職員の元同僚でもあり、不正の認識を共有していたとみられる。

 02年、滞納事業所が合併する際、社名変更に乗じ、標準報酬月額をさかのぼって引き下げたケースでは、社保事務所職員が勧めていた。調査委では、これらは背任容疑などでの刑事告発に相当する悪質な事案としているが、いずれも公訴の時効が成立している。

 ◆隠ぺい

 報告書に盛り込まれた職員へのアンケートからは、改ざんを隠ぺいする手口も浮かび上がった。

 首都圏のある職員は、改ざんのため標準報酬月額を訂正する届け出を受けた場合、証拠の書類を「シュレッダーで破棄した」と証言。白紙の届け出書に、事前に事業主の社判と代表印を押させ、後で職員が代筆した例もあった。倒産で事業主が行方不明になると、三文判を買って書類を偽造したことさえあったという。

 ◆偏り

 報告書は、改ざんの疑いが濃厚なケースが多い事務所として、東京都内の渋谷、新宿、港の3事務所を挙げた。年間の処理件数から見た割合が高いのは愛媛県の松山西、松山東、長野県の小諸の各事務所だった。

 一部の事務所で改ざんが多発する背景について、都内の職員は読売新聞の取材に「徴収成績が悪いと、所長が社会保険事務局に出向いて決意表明させられる。渋谷、新宿、港といった大きな事務所には、ものすごく大きなプレッシャーがかかっていた」と話した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081129-00000003-yom-soci