記事登録
2008年11月28日(金) 11時34分

無期囚の仮釈放情報、HPで公開へ産経新聞

 法務省は28日、無期懲役の判決を受け、刑務所に服役している無期懲役囚の仮釈放審理に関する情報をホームページ(HP)で公表することを決めた。審理結果(許可・不許可)を問わず、「罪名」や「被害者数」など具体的な情報を公開することで仮釈放の透明化を図り、国民に理解を求めていく。森英介法相が28日の閣議後会見で発表した。

 仮釈放は、原則刑務所など刑事施設の長が申請し、地域ごとに8カ所ある地方更生保護委員会が「許可」「不許可」を決める。許可件数については、これまでも統計年報などで公表してきたが、不許可や具体的な審理の情報などは公表してこなかった。

 しかし、法務省では無期懲役囚の仮釈放について国民の正しい理解を得るためにも、情報の公開が必要と判断。仮釈放の運用状況の透明化を図るため、国民にわかりやすい形で法務省のHPに情報を登載することを決めた。

 登載する情報は、無期懲役囚個人が特定できない範囲で、平成10〜19年に行われた審理(計114件)の「判断結果」「判断時年齢」「判断時在所期間」「主な罪名」「被害者数」「(被害者数の)うち死亡者数」など。毎年、更新していく予定という。

 また、慎重かつ適正な仮釈放審理を実現するための方策として、従来も多くの場合で行い、審理の参考にしてきた被害者、遺族らの意見聴取の義務化のほか、単独が多かった更生保護委員による面接を複数委員で行うことや検察官の意見照会を必ず実施することも決めた。

 無期懲役囚の仮釈放をめぐっては、一部で「受刑10年から十数年で仮釈放が許される」などの理解がなされ、死刑との差が大きいとして終身刑創設などの意見もある。だが、過去10年の仮釈放者は、平成10年の15人を最高に計79人で、平均入所期間は10年の平均20年10カ月から17年には27年2カ月、19年には31年10カ月と長期化している。

 19年末の入所無期懲役囚1670人中、仮釈放されず入所期間が40〜50年の受刑者が13人、50〜60年が5人いるなど長期服役者も多い。さらに、この10年で仮釈放されず死亡した無期刑囚は120人に上った。

 来年開始される裁判員制度を控え、現状と誤った理解の隔たりを埋めるためにも、運用の適正化・透明化を図ろうと、法務省で今年8月、勉強会を設置し、見直しを進めていた。

 森法相は会見で、「無期懲役の実態と制度の現状を踏まえ、より合理的な運用についてそれなりの考え方を示せたと思うが、今後もいろいろな場面で考えていきたい」と話した。同省は、今後関係省令の改正や通達などを経て、「できるだけ早期に実施する」としている。

【関連記事】
法務省に仮釈放の勉強会 無期懲役受刑者が対象
無期懲役囚の仮釈放 被害者の意見聴取を義務化へ
20人以上の女性襲った連続強姦魔に無期懲役
再審準備中の西山死刑囚への接見妨害で国を提訴 広島
死刑囚「いつ処刑…苦しい」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081128-00000530-san-soci