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2008年11月28日(金) 14時33分

育児や介護、自治体サポートに温度差…裁判員制度読売新聞

候補者名簿記載通知に同封された説明書=代表撮影

 28日午前から、候補者名簿登録の通知が全国約29万人へ向けて発送され、いよいよ始動する裁判員制度。幼い子供や介護が必要な家族がいる人が裁判員に選ばれた場合、自治体がどれだけサポートできるかが課題だが、支援策の検討には温度差があるのが実態だ。

 ◆育児◆

 厚生労働省は今年3月、都道府県などに対し、一時保育の時間延長や事前手続きの簡素化など、裁判員が保育サービスを利用しやすい体制を整えるよう要請する通知を出した。

 これを受け、横浜市や長野市は、市外の住民が裁判員に選ばれた場合、裁判所に近い市内の保育所に子供を預ける際の事前面接を省略し、電話や書面での審査で済ませる方向で検討を始めた。一方、福岡地裁小倉支部を抱える北九州市は、「子供を預かるのは重大なことで、書面審査のみで決めるのは難しい」と悩む。

 大都市圏の保育所不足も深刻だ。名古屋市は、官庁街にある地裁近くに一時保育を行う保育所がないため、地裁からバスなどで約30分の距離にある2か所の私立認可保育園で受け入れる方針。同市以外の市町村から名古屋地裁に呼び出された人の利用料は、名古屋市民の2倍程度に設定する予定という。「元々市民のニーズが高く、順番待ちの状態。市外の利用者の受け入れは、市民に負担をかける」(市子育て家庭部)と説明する。

 ◆介護◆

 介護が必要な家族を一時的に施設に預ける場合は、介護保険のデイサービスやショートステイの利用が考えられる。利用には、事前に要介護認定を受ける必要があるが、兵庫県姫路市は、介護する人が裁判に参加しやすいよう、迅速に認定手続きを進めることを検討中だ。宮城県は先月末、仙台地裁に県内36市町村の健康福祉課の窓口一覧と電話番号をまとめた資料を提出。地裁は、デイサービスなどを利用したい裁判員に窓口を紹介するなど、資料の活用方法を検討するという。

 育児や介護といった事情があれば裁判員を辞退する理由になるが、「サービスを利用出来るなら参加したい」という人も多く、各自治体にはさらなる支援策の検討が求められている。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081128-033595/news/20081128-OYT1T00422.htm