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2008年11月27日(木) 00時00分

財政審 苦渋の建議 景気対策優先策を容認産経新聞

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関、西室泰三会長)は26日、財政健全化の維持を求める平成21年度予算編成に関する建議(意見書)を中川昭一財務・金融担当相に提出した。米国発の金融危機を背景に景気悪化懸念が高まる中で、政府・与党による経済対策で財政事情が一段と悪化する事態に懸念を示した。

 西室会長は建議提出後の記者会見で「いま一番大事なのは、経済が沈んでいかないように食い止めることだ」と述べ、景気対策を優先する政府・与党の姿勢を容認した。そのうえで西室会長は「平成23年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化に向けた努力が必要だという認識に変化はない」とも強調し、建議でも黒字化目標の達成に向けた取り組みの重要性を盛り込んだ。

 また、建議では国・地方の長期債務残高が20年度末に778兆円となる見通しであり、国内総生産(GDP)比148%で先進国で最悪水準にあることを指摘し、「持続的な経済成長と社会保障制度を構築するために財政健全化を進める必要がある」と訴えた。

 一方、財政投融資特別会計の準備金を追加経済対策の財源に活用することをめぐっても、建議では日本の景気減速が深刻化する恐れがあるために容認した。ただ、「臨時的・特例的な対応であることを十分認識すべきだ」として特会の安易な財源活用を牽制(けんせい)した。

 金融危機による世界的な景気減速で日本経済の先行きに不透明感が高まっており、建議は財政出動を伴う景気対策の必要性は認めつつも、財政健全化に向けた継続的な努力を求める苦しい内容となった。

 世界経済の低迷などで日本企業の業績も落ち込みをみせ始めており、法人税収の低迷などで20年度の一般会計税収も当初見積もりの53・5兆から6兆円超も下方修正される見通し。麻生太郎首相が26日の参議院本会議で、二次補正予算で赤字国債の発行を示唆するなど、財政事情が厳しい中でも景気対策を優先せざるを得ない状況を迎えている。

 世界経済が今後も悪化して日本の景気後退が深刻化すれば、基礎的財政収支の黒字化目標を先送りする事態なども予想される。財政健全化への道のりが困難になっただけに、政府は財政再建に向けた長期的な目標を改めて示す必要に迫られそうだ。

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