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2008年11月27日(木) 14時47分

旧五菱会系のヤミ金収益29億円、被害者へ分配進まず読売新聞

 指定暴力団山口組旧五菱会系のヤミ金融グループによるマネーロンダリング(資金洗浄)事件で、スイス当局から日本政府に返還された犯罪収益約29億円を被害者に分配する手続きが思うように進んでいない。

 東京地検に返還金の給付を申請した被害者は26日現在で1241人にとどまり、同地検が被害者の可能性があるとみる約3万7000人よりはるかに少ない。申請期間はあと2か月しかなく、多くの人が被害回復の機会を失う懸念もある。

 27日、東京・霞が関にある東京地検の「五菱会事件被害回復センター」を、全国ヤミ金融対策会議の弁護士らが訪れ、相談を受けた被害者20人分の給付申請書を担当者に手渡した。

 その後、同会議事務局長の木村裕二弁護士は「訴訟を起こすのに比べ、簡単に被害金を取り戻せる」と強調し、名乗り出ていない被害者にも申請を呼びかけることを表明した。

 同地検が被害者に分配するのは、「ヤミ金融の帝王」と呼ばれた梶山進受刑者(59)が集め、資金洗浄目的でスイスの銀行に送金したヤミ金収益。2004年にスイス当局が約58億円を没収し、今年5月に半額が返還された。06年施行の被害回復給付金支給法の初適用を受け、今年7月末から半年以内に被害者が申請すれば、書類審査を経て返還金から被害額分が給付される。

 ところが、申請は低調だ。同地検は7月以降、ヤミ金業者の顧客名簿などから割り出した約3万7000人に「支給対象になる可能性がある」との通知を送ったが、約2万人があて先不明で返送された。約1万7000人には届いたとみられるが、申請した人はその1割にも満たず、法務省幹部は「『ヤミ金の被害は忘れたい』と、申請をためらう被害者も多いのではないか」と推測する。

 事件から約5年が経過し、全国ヤミ金融対策会議には「被害金額が分かる明細を捨ててしまった」という相談も寄せられている。申請の期限は来年1月26日で、申請が少ないままだと返還金が余って国庫に入り、被害者のために使えなくなる恐れもある。同地検は「明細がなくても記憶を基に被害を認定できる場合もあるので、あきらめずに申請してほしい」としている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081127-00000030-yom-soci