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2008年11月27日(木) 00時00分

ネットブックは安くてイイことずくめか?読売新聞

メーカー側があえて使用法に言及

「N10J」を持ち日本市場へのコミットをアピールするASUSのケビン・ドゥ氏

 現在、パソコン市場全体を活性化させる原動力となっている低価格パソコン「ネットブック(*)」。本体価格が5万〜9万円台、通信機器とセットで購入すると100円、9800円という低価格での販売があった。だが、「できることには限りがあり。20万円前後のノートパソコンとは違うものと考えた方がいい」との声もある。

 「ネットブック」誕生の裏にはインテルが開発した低価格端末用プロセッサー「Atom」の存在がある。そのインテルが9月に開催したクライアントパソコン向け戦略に関する記者説明会の席上、江田麻季子・技術本部長が「Atomを搭載したネットブックや、インターネット端末はフルPCとは異なる。フルPCの機能を期待して購入すると期待を裏切られることになる。メディアの皆さんは、この点をエンドユーザーに知らせてほしい」と強く訴えた。

 Atomは、多くのノートブック型に搭載されているCentrino2と比べるとはるかに低価格。だからこそ、Atom搭載のネットブックは、Centrino2搭載のノートパソコン(20万円前後)に比べ、格段に安くなっている。一見、同じノートパソコンと考えがちだが、その中身は大きく異なっているのだ。

 江田本部長は、Atom搭載のネットブックの用途を、「これまで利用していなかったインターネットを始めたり、2台目、3台目のパソコンとして利用するのには向いている」と指摘する。バックグラウンドでセキュリティー対策ソフトを動かしながら他のソフトを利用したり、Flash

Player以外の動画再生など、CPU負荷が高い作業に利用すると、思うように動かずフリーズするといった事態に陥りやすいようだ。

 処理速度が現在のものほど高くないプロセッサーを搭載した数年前のパソコンを動かしているようなイメージだろうか。最新のパソコンと同じことができると思って購入すると、期待を裏切られることになる。形状としても、コストを抑えるために薄型とすることは難しく、サイズの割には重量がある製品が多い。この点もよく考慮し、用途や限定した使い方をするための専用マシンとして割り切って購入すべきだろう。

携帯端末ユーザー争奪戦

 絞り込んだ機能しか持たないネットブック誕生の背景では、携帯電話やデジタル家電の世界に思うように参入できていないインテルの意向が強く働いている。「メールやインターネットの利用は、パソコンを使わず、携帯端末で十分」と考えるユーザーを奪還するのがネットブックに課せられた使命なのである。マイクロソフトもその意図に賛同し、通常のノートパソコンとは異なる価格でウィンドウズを提供しているからこそ、ネットブックの低価格は実現している。

 さらに、その意図を後押ししているのがASUS、Acerという台湾メーカーだ。エイサーグループのジェイティ・ワンCEO兼会長は、日本での講演で「3年以内に日本でシェアトップ5に入る」と宣言。アスースの日本地域担当 ゼネラルマネージャーのケビン・ドゥ氏は新製品「N10J」の発表会で、「サポート体制を強化し、国内でのASUSブランドをさらに定着させたい」とアピールした。

 現在のネットブックの売れ行きを見ると、展開は両社の意図通り。このままいけば、ネットブックは携帯端末ユーザーの奪還だけでなく、日本メーカーから市場を奪う大きな勢いになる可能性すらある。(フリーライター三浦優子/2008年10月24日発売「YOMIURI PC」2008年12月号から)

 従来のモバイルパソコンよりも安価で小型・軽量。機能は限られている。「ミニノートPC」「UM(ウルトラモバイル)PC」ともいう。

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20081126nt11.htm