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2008年11月26日(水) 13時03分

裁判員制度:導入へ半年 啓発活動や模擬裁判で不安解消、周知へ /秋田毎日新聞

 ◇28日までに通知書
 09年5月の裁判員制度開始を前に、県内でも候補となる名簿登録者1200人への通知が28日までに最高裁から各世帯に届く。秋田地裁は疑問や不安の解消、認知度アップのため啓発活動に力を入れ、大学でも裁判員制度を意識した模擬裁判が開かれるなど半年後に向けた準備が進んでいる。【野原寛史、坂本太郎】
 ◇来年12件程度に参加 名簿記載確率、全国で最も低く
 裁判員制度の対象となるのは刑事裁判のうち、現住建造物放火▽強盗▽危険運転致死、傷害致死▽殺人——などの重大な事案。
 県内で当てはまる裁判は06年が15件、07年は10件(起訴時点)で、全国的に注目された藤里町連続児童殺害事件も含まれる。秋田地裁は裁判員が参加する事案を年間15件前後、来年は制度スタートの5月以降で12件程度とみている。
 発生件数が少ないため、裁判員名簿に記載される確率は有権者786人に1人と、全国で最も低い。
 裁判員の候補者は各自治体から人口に応じて選ばれる。日当の他に秋田地裁までの交通費が支給されるが、片道3時間以上かかるケースも。鉄道で100キロを超す場合は新幹線・特急の利用が可能だが、県内では特急の運行本数が少なく使える場所は限られる。
 個別の事情に応じて宿泊も認められ、その費用も出る。
 全国的な傾向として裁判は7割が3日以内、2割が5日以内に終わるとみられる。
 また裁判といえば、用語が難しく敷居が高いというイメージが強い。
 県内でも検察、弁護側の双方が制度開始に向け、よりわかりやすい表現をしようと研修をしたり公判に使う言葉を選ぶなど、試行錯誤を重ねている。
 秋田地裁は不安解消と制度への理解を広めようと、企業や大学などで出前講義を実施。1月から10月末までで2895人が参加した。裁判所の見学者も増加傾向にあるという。
 同地裁で今月4日から3日間、「裁判員」が参加する模擬裁判が開かれた。内容は危険運転致死事件。出前講座などで募った希望者と協力企業からの6人が裁判員役を務めた。
 今回は、重大事件の被害者が検察官の隣に座り質問などができる「被害者参加制度」(12月開始)を踏まえた内容。“被害者の妻”役が法廷で被告に厳罰を訴えた。
 評議の結果、判決は懲役7年(求刑8年)。裁判員から「遺族感情が厳しいのは当然で、それをもって刑を重くするのはどうか」との意見が出た。馬場純夫裁判長は「被害者感情を、冷静に受け止めていたようだ」と感想を述べた。
   ◇  ◇
 今月15日には、秋田市のノースアジア大でも模擬裁判があった。
 中学生時代の親友と口論になった33歳の男が、包丁で刺して死に至らせたという設定。裁判官役と裁判員役の評議の末、殺人罪に問われた被告に懲役6年を言い渡した。
 この模擬裁判は同大3年、鈴木快士さん(21)が脚本を制作。一般市民に裁判員制度の仕組みや公判の流れを知ってもらうのが最大の目的だったという。
 評議の中で、裁判員は守秘義務や、逆恨みに遭うことがないか、判例はどうなっているかなどを裁判官に質問。裁判官が丁寧に答えた。また2人の裁判員が当初は「友人を殺すわけがない」と殺意を否定したが、証拠や証言などから意見を変える。評議の途中で意見が変わっても構わないという説明も兼ねた展開だ。
 会場で見ていた男性(62)は「制度について知ることができた。裁判員に選ばれたら大変だが、義務である以上やるしかないだろう」と話していた。

11月26日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081126-00000108-mailo-l05