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2008年11月26日(水) 12時04分

「タクシーヤミ金」大阪府内で激減 昨年比4分の1に産経新聞

 低賃金に苦しむタクシー運転手の弱みにつけ込み法外な高金利で貸し付ける「タクシーヤミ金」の大阪府内の業者数が、昨年比で約4分の1に激減していることが26日、「大阪クレジット・サラ金被害者の会」(大阪いちょうの会)の調査で分かった。警察の摘発や業者を相手取った提訴などの効果とみられる。ただ、“残党”が水面下で営業形態を巧妙に変えてしぶとく生き残りを図り、不況に乗じて再び活発化する恐れもあり、同会は警戒を呼びかけている。

 タクシーヤミ金は、平成16〜17年に大阪で初めて確認され、新手の手口として全国の都市部に拡大したとされる。

 タクシー運転手がヤミ金に狙われる背景には、売り上げの一部を前借りできる「日銭」の制度に加え、勤務終了後には必ず営業所の車庫に戻るため、業者が取り立てしやすいという業界の特性がある。業者は貸し付けの際、身分証明書や所属営業所を確認したうえ、日ごろの運行ルートも報告させる。

 また、融資する運転手2人をお互いに保証人にするケースが多く、片方の運転手が返済から逃れようとしても保証人の同僚に迷惑がかかることを恐れて泣き寝入りするため、被害実態がつかみにくいという。

 同会によると、被害がピークとされた昨年1年間に受け付けた約40件の相談内容から、大阪府内の業者数を少なくとも約80社と推計。これに対し、今年1月以降の相談は半減し、同様に相談内容から検討した結果、業者数は20社前後にまで減少したとみている。

 減少傾向に転じたのは、同会に相談した大阪市内の40代の運転手2人が昨年12月、業者を相手取り計約35万円の損害賠償を求めて大阪簡裁に提訴して以降。摘発や提訴の動きに危機感を抱いた業者が徐々に手を引いたとの見方が強い。

 今年6月の大阪簡裁判決は、出資法の上限金利(年利29・2%)を大幅に上回る約228%で貸し付けていたと認定した上で「違法性が高く、運転手に元本を返還する義務はない」と判断、業者に賠償を命じた。

 昨年まで堂々と店舗を構えて営業し、タクシー会社の営業所や客待ちの待機場所まで取り立てに来ていた業者は多かったが、現在は目立たないマンションの1室を拠点にするケースが多い。このため、返済の滞った運転手が同会や警察に逃げ込んでも業者を特定できないという。

 さらに最近、摘発や提訴を免れるため、マンションのドアに封筒とボールペンをつるし、返済に訪れた運転手に名前とともに返済金を入れさせる“無人型システム”を取り入れている業者も確認されている。

 同会の川内泰雄事務局次長は「タクシーヤミ金は利益率が高いだけに復活する可能性が高い。撲滅のためにも勇気を持って相談してほしい」と話している。

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