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2008年11月26日(水) 17時43分

【元女優に判決】(2)「性交時に第三者が創傷を負わせたとは考えられない」産経新聞

 《主文を読み終えると裁判長は、検察側、弁護側双方の主張を整理し、理由の説明に入った》

 《まずは犯行時間についての検討から。木村衣里被告は微動だにせず、背筋を伸ばしまっすぐ正面を見据えたまま、判決を聞いている》

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 裁判長「午前5時にマンションの4階でエレベーターを降りた時点では、創傷を負っていないことが確認でき、その後から被告人が119番通報した午前6時40分までに創傷を負ったものと認められる」

 《続いて争点の1つである、「第三者の犯行の可能性について」》

 裁判長「玄関ドアに施錠されていたことが認められ、セックスしているときに第三者が被告人に創傷を負わせたとは考えられない。セックスをしていたときにはすでに創傷を負っていたことが認められ、第三者の行為によって創傷を負ったとすれば、その後に被告人とセックスをしたとはおよそ考えられない」

 《弁護側は「第三者の犯行の可能性も捨てきれない」と主張していたが、裁判長は第三者の犯行を完全に否定した。続いて犯行に使われた凶器の認定に移る》

 《凶器の刃物については、検察側は(1)傷口とナイフの形状が一致している(2)ナイフの刃と柄から、藤家さんと木村さんのDNA反応が認められる(3)ナイフに藤家さんの衣類の繊維が付着していた−として藤家さん宅にあった果物ナイフが凶器と主張していた》

 《一方、弁護側は「果物ナイフからは血液反応はなく、事件後に流し台の水につけていたとしても、それほど早く消えるものか疑問」と主張。検察が他の文化包丁などを検査していないずさんな捜査−としていた》

 裁判長「傷は皮膚から6センチ、刃渡りは9・8センチ…果物ナイフは流しの中の鍋で水に浸かっていた」

 《裁判長はナイフや傷口の形状、ナイフが見つかった状況など事実関係を一通り説明し、「創傷の形状とも符号している」と判断した》

 《続いて果物ナイフに、藤家さんが着ていたジャンパー、セーター、シャツの類似繊維5種類が付着していたことを説明する》

 裁判長「被害者が着ていたジャンパーの中綿の繊維に裏生地の繊維、セーターの生地の繊維、シャツの繊維…。これだけの繊維が日常生活の中で果物ナイフの刃に付着するとは考えられず、被害者が負傷した際に付着した可能性が極め高い」

 《裁判長は証拠から得られた事実関係を淡々と説明すると、争点の1つだった凶器については、「果物ナイフによるものと推定される」と凶器を認定した》

 《裁判長は感情を押し殺したように、判決理由を説明する。満員の傍聴席には、メモを取りながら裁判長の言葉を書き取る傍聴人の姿も》

 《衣里被告は両手をひざの上に置き、相変わらずじっと聞き入っている。前回公判の最終意見陳述で「何があったのかをこの法廷で明らかにしてほしいと切に、切に願います」と話した衣里被告。裁判所の認定は胸に届いているだろうか》

    =(3)に続く

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