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2008年11月24日(月) 10時26分

麻生首相 金融危機で存在感示すも、見せ場はつくれず APEC産経新聞

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席するためペルーのリマを訪れていた麻生太郎首相は23日夜(日本時間24日午前)、すべての日程を終え政府専用機で帰国の途についた。一連の外交行事の中、隠れた焦点だった中国の胡錦濤国家主席との会談を通じ、「国際的な金融危機で日本の主導的な役割を国内外に印象付ける」(首相周辺)という目的はひとまず達成した。ただ、会談日程をめぐり中国側に振り回される姿を露呈するなど、政権浮揚につながる見せ場づくりには至らなかったようだ。(リマ 佐々木類)

 22日夜、ペルーのガルシア大統領主催の夕食会終了後のことだった。会談に立ち会った日本側関係者によると、会場の片隅で行われた胡氏との首脳会談が始まると、撮影厳禁の会場内に中国側カメラマンがどっと押し寄せ、想定外の撮影会が始まった、という。

 日本側には、首脳会談は夕食会の最中に急きょ決まったという思いがあっただけに、中国側の手際の良さに「会談時間と場所を入念に調査していたのは間違いない」(首相同行筋)との不信感が生まれた。慌てた日本側も随行のカメラマンらを会場に呼び寄せ、中国ペースで進みかけた会談の流れに待ったをかけざるを得なかった、という。

 それにしても、なぜこれほどまでに中国側が会談をめぐり態度を2転3転させたのか、同行した政府高官も首をひねる。

 この点について外務省筋は「中国にはワシントンでの金融サミットを含め、国際金融危機への対応で日本の後手に回っているとの焦りがある」と指摘する。会談の中で麻生首相が胡氏に対し、国際通貨基金(IMF)への資金拠出を念頭に中国の積極的な参加を促した際、胡氏が返答につまったのはその現れとみてとることができよう。

 もともと、日本との首脳会談に積極的だったのは中国の方だが、目に見える成果が期待できない状況下で会談に臨めば、「単なる日本の引き立て役になってしまう」(別の同行筋)ことを懸念して個別会談をためらったとの見方もある。

 一方、メドベージェフ露大統領との会談では、北方領土問題の解決をめぐって大統領から、「次世代に委ねない」との新しい言い回しを引き出した。初顔合わせということに配慮し、正面からの論争を回避した結果ではある。ロシア側が大統領の言葉をどこまで誠実に実行するかはまったく読めないのが実情だが、ここ数年間、停滞して久しい領土交渉を動かすきっかけになったのは間違いない。

 首相は帰国後、日中韓の3カ国会談や東アジアサミットなどの外交日程が立て込む一方、新テロ対策特別措置法改正案や金融機能強化法改正案など内政上の課題が山積しており、綱渡りの政権運営が続く構図は変わりなさそうだ。

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