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2008年11月24日(月) 02時40分

【元厚生次官ら連続殺傷】なぜ2人を狙った?不可解な動機 「職員録を閲覧」とも供述産経新聞

 今後の捜査では、小泉毅(たけし)容疑者(46)が2人の元厚生事務次官を狙った動機の解明が最大の焦点となる。「昔、保健所にペットを殺されて腹が立った」と供述しているが、なぜ多くの次官経験者の中から2人を狙ったのか、その理由は見えてこない。2人は在省当時、保健所業務に携わったことがなく、「元厚生次官なら誰でも」といった“無差別殺傷”の可能性を指摘する警察幹部や、「年金問題が引き金になったのでは」という心理学者の声もある。

  ■写真で見る■小泉毅容疑者とは一体どんな人物なのか

■保健所と無関係 

 吉原健二さん(76)と山口剛彦さん(66)はいずれも「年金のプロ」として、現行の基礎年金制度の創設に深く関与するなど行政上の共通項が多く、警察当局では厚労行政との関連にも注目していた。

 しかし小泉容疑者は警視庁の調べに対し、「保健所にペットを殺された」と供述。さらに複数の在京テレビ局のホームページなどには、小泉容疑者が出頭する2時間ほど前、「年金テロではない」「34年前、保健所に家族を殺された仇討ち」などと書き込みがあった。

 小泉容疑者が書き込んだとすれば、少年時代の出来事を理由に凶行に及んだ可能性がある。保健所の設置主体は地方自治体だが、厚労省は食中毒や予防接種などについて保健所に指導できる立場にある。

 それでも保健所業務と直接関係がない2人を狙った理由としては不可解だ。

 警察幹部は「突拍子のない話。2人をなぜ狙ったのかは最大の関心事で、がっちりと調べて解明したい」と話す一方、元厚生次官を狙った“無差別殺傷”の可能性も指摘する。

 犯罪心理学者で聖学院大の作田明客員教授は、「執拗(しつよう)な性格の持ち主かもしれないが、ペットだけが理由というのは論理に飛躍がある。やはり年金に関心があったのではないか」と分析。東京・霞が関の警視庁に出頭したことについても「警察権力の中枢に車を乗り付けたのは自己顕示欲の表れ」とみる。

■「職員録を閲覧」

 2つの事件はいずれも、傷口の状況から細い片刃のナイフが使われており、小泉容疑者が出頭時に所持していたナイフも同じ形状だった。DNA鑑定でナイフに付着した血痕と殺傷された3人の血液とが一致すれば、殺傷事件への関与を裏付ける大きな物証となる。

 小泉容疑者が出頭する際に乗り付けた車からは、ナイフのほか、2つの段ボール箱や複数のスニーカーも押収。段ボール箱は宅配業者を装って2人の自宅に侵入する際の小道具に使われた可能性が高い。

 2人の自宅の住所はどうやって割り出したのか。

 吉原さん宅はインターネットで検索することができるが、山口さん宅はNTTの番号案内にも登録されていない。ただ、省庁関係の過去の職員録には住所の記載があったという。小泉容疑者は図書館など公的施設で過去の職員録を閲覧したという趣旨の供述をしているといい、警視庁は閲覧記録を確認するなど供述の裏付け捜査を進める。

 小泉容疑者は警視庁の留置施設に勾(こう)留(りゆう)されており、銃刀法違反事件の捜査終了後、連続殺傷事件の捜査に移る。警視庁と埼玉県警では小泉容疑者の移送の有無などについても協議していく。

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