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2008年11月24日(月) 00時00分

《3》弁護士 難しい情状主張読売新聞

判決の言い渡しを受ける被告役の男性(左)と弁護士(右)。弁護側は執行猶予つき判決を求めたが、裁判員には支持されなかった(20日、富山地裁で)

 富山地裁で20日まで行われた危険運転致死罪を想定した模擬裁判で、3人の弁護士は、法廷に設置された大型スクリーンに被告に有利な情状を示し、懲役3年以下の執行猶予判決を主張した。しかし、評議の結果下された判決は、検察側が求めた懲役8年に近い懲役7年。しかも、検察側の主張よりも重い懲役12年を支持する裁判員も多く、弁護側の主張を支持する意見は少数だった。

 この模擬裁判では、12月1日から始まる「被害者参加制度」を初めて取り入れた。これは、法廷に被害者の親族らが参加して意見を述べるもので、懲役12年は被害者の意向として、代理人弁護士が求めた。

 これまでの刑事裁判では、検察側と弁護側だけが量刑について意見を述べ、判例を参考にした、いわば「相場」があったが、裁判員制度で量刑に大きな差が出てくる可能性がある。

 代理人役を務めた弁護士は、被害者感情を考えると、法定上限の刑を求めるケースが多くなると言い、「今回は論点求刑を聞いて主張を考えたが、弁護士としては被告の情状も分かるだけに対応が難しい」と語った。一方、別の弁護士は「裁判員に(被告側の)情状を印象づければ、判例よりも大幅に軽い判決が出る可能性もある」と指摘する。

 弁護士は、国民感情を逆なでするような事件でも、被告側に立って、有利な情状を主張するが、こうした立場が、どう評価されるのかを危ぶむ弁護士もいる。

 ある弁護士は「弁護士は『個人事業主』で、証拠収集を組織的に行える検察より不利。どこまで、被告の情状を理解してもらえるか。弁護技術を磨くしかない」と説明した。

      ◎

 国民の司法参加を促進する立場から、制度への協力を呼びかける日本弁護士連合会は各地の弁護士を対象に研修を実施。この研修を受けた県弁護士会(金川治人会長)の弁護士は7月、「裁判員の目を見て話す」「裁判に『勝つこと』を意識して弁護する」など、陪審員制度がある米国の「プレゼンテーション」を重視した弁護について講習した。同会は、弁護士1人では対応が難しい重大事件では、裁判所に複数の選任を要請することも検討する。

 ただ、日弁連が制度への協力を呼びかけているのに対し、新潟や栃木の弁護士会は、制度導入の延期を求める決議をした。全国的にも制度を評価する足並みがそろわない中、県内の弁護士も手探りの模索が続く。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/toyama/feature/toyama1227279936308_02/news/20081124-OYT8T00013.htm