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2008年11月24日(月) 21時34分

実現性は?金融危機「18カ月で克服できる」 APEC産経新聞

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は金融危機対応策も大きな焦点となった。最終日の23日には「危機を乗り越えるために必要なすべての経済的・金融的措置をとる」との首脳宣言を採択する一方、22日には特別声明に「18カ月間で克服できると確信する」と明記。世界経済の安定化に強い決意を示した。しかし、危機の発信源である米国はシティグループへの追加資本注入に迫られるなど金融システムの安定化に手間取っており声明通りに危機を克服できるかは不透明だ。(石垣良幸)

 首脳会議では、15日の緊急首脳会合(サミット)の合意内容を評価。金融システムの安定化に向けて、規制や監督体制の強化や国際通貨基金(IMF)などの増資の必要性について認識を共有した。さらに金融サミットから一歩踏み込み、危機を終結させる期限を具体的に明示してみせた。

 「18カ月間で克服」といえば、2010年半ばになるが、世界経済を牽引(けんいん)してきた米経済の動きを見る限り、楽観的な印象が強い。

 米政府は23日に金融大手のシティグループへの200億ドル(約1兆9000億円)の追加資本注入を決定した。10月末には金融安定化法に基づき250億ドルの公的資金注入を受けたばかりだが、1カ月もたたないうちに再び資本注入に踏み切らざるを得ず、金融危機に歯止めをかけられていないのが実情だ。

 金融危機が生産、消費など実体経済にも深刻な影響を及ぼしており、基幹産業である自動車産業にも破綻(はたん)の危機が押し寄せている。

 「ビックスリー(自動車大手3社)のうち1社でも破綻すれば、300万人の失業者が出る」との指摘もある。GMの連邦破産法の適用申請も取りざたされ、米国の大量失業時代の到来は現実味を増している。借金をしてまで消費につぎ込んできた米経済の構造を大きく変えることは確実で、バブル崩壊から立ち直るのに10年以上を費やした日本の悪夢の再現を指摘する声もある。

 中国やロシア、東南アジアなどAPECに加盟する新興・途上国にも危機は波及しつつあるが、これらの国の潜在的な成長力は強く、新たな世界経済の牽引役を期待されている。日本は先にIMFに1000億ドル規模の資金支援を表明したが、新興・途上国の成長に向けた協調支援が今後も求められるのは確実だ。

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